2012年12月に9人が死亡し、2人が重軽傷を負った中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故で、山梨県警は22日、亡くなった20代の男女5人の遺族に横浜市内で捜査状況を説明した。説明後、遺族は「民事裁判で限界だった事実解明を、刑事裁判で果たしてほしい」と訴えた。
遺族によると、山梨県警の幹部は業務上過失致死傷の疑いで、中日本高速道路(名古屋市)の前社長(74)らを月内に書類送検すると説明。事故から5年を迎える12月2日には現場近くで追悼慰霊式が開催されることから、上田達さん=当時(27)=の父聡さん(65)=横浜市金沢区=は「落ち着いた気持ちで慰霊式に臨みたかった。5年は長かったが、月内に送検すると明言してもらえて良かった」と話した。
「事実解明の入り口に立ったようなもの」と打ち明けたのは、石川友梨さん=当時(28)=の父信一さん(68)=横須賀市。「罪を問うのが目的ではなく、起訴してもらい(刑事裁判で)事実を知りたい」と期待を込めた。
ただ、法の限界を指摘する声も上がった。森重之さん=当時(27)=の父親(66)は「捜査に尽力いただいたが、多数の人間が長期間にわたって行う企業活動で、特定の人だけが(捜査の)対象になるのはしっくりこない。責任ある企業活動にするためにも、重大事故を起こした法人の刑事責任を問う制度ができてほしい」と述べた。
事故を巡っては、中日本と子会社に賠償を求めた横浜地裁の民事訴訟で会社側の過失が認められた一方、役員の責任を問う別の民事訴訟では遺族側敗訴が確定している。