
大規模地震時の帰宅困難者対策に力を入れている横浜・みなとみらい21(MM21)地区の事業者が中心となり、取り組み強化に向けた都市再生安全確保計画を策定した。数値目標を示したのが大きな特徴で、現状の一時滞在施設(19施設)では、最悪ケース(2万7千人)の約半数しか受け入れられないとして、1万3千人分の受け皿不足を解消する方針を明記。隣接する横浜駅周辺の事業者とも連携し、混乱回避の手だてを探る方針だ。
計画は都市再生特別措置法に基づくもので、同地区でまちづくりの調整や環境対策などを担う一般社団法人「横浜みなとみらい21」(友田勝己理事長)を中心に検討。国・県・市や事業者などで構成する「横浜都心・臨海地域都市再生緊急整備協議会」が10月に策定した。
最悪ケースとして想定した関東大震災級の巨大地震で鉄道や道路が途絶し、同地区のおおむね10キロ圏外に居住する4万2千人が帰れなくなると見込んだ。地元企業が従業員の一斉帰宅を抑制して事業所に留め置く人数などを差し引き、実際には2万7千人に支援が必要になると算定。これに対し、現時点で受け入れ可能なのは商業施設やホテル、企業など19の一時滞在施設で計1万4千人にとどまると試算し、1万3千人分の施設や支援が不足していると判断した。
その改善に向け、今後進出する企業や施設などを中心に一時滞在施設への登録を促し、従業員の帰宅抑制の実施もさらに求めていく方針を明記。地区内の大規模マンションにも協力を依頼する考えだ。
また、受け入れ状況などの情報を同法人と施設間で迅速に共有できるよう、ウェブサイトの災害時掲示板をリニューアルする。滞留者の支援策として備蓄倉庫の整備を進めるほか、鉄道の運行や被害の状況などの情報を提供する設備の導入も課題に挙げている。
一方、先行して都市再生安全確保計画を定め、同様に帰宅困難者が大きな課題の横浜駅周辺地区とも連携を探る。乗降客数が1日200万人に上る同駅の周辺は、古いビルなどが密集する地域で建物倒壊や火災の恐れがあり、一時滞在施設も不足している。
協力の一環として今月15日には、横浜駅西口の河川に整備された浮桟橋から船で帰宅困難者をMM21地区に運ぶ水上輸送訓練が初めて実施された。こうした手法の実用化も念頭に、両地区の連携による混乱回避策の検討が進む見通しだ。
同法人の八幡準企画調整部長は「耐震性能の高いビルが多いMM21地区の被害は限定的とみられるため、横浜駅などから滞留者の流入も予想される。来街者の一層の増加も見込まれるだけに、今回の計画をスタートラインと位置付け、さらに対策を進めていきたい」としている。