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米兵犯罪賠償、日本政府が6割負担 遺族「なぜ肩代わり」

社会 | 神奈川新聞 | 2017年11月18日(土) 02:00

示談書への調印後に会見に臨む、強盗殺人事件の遺族・山崎正則さん(左)と傷害事件の被害者・田畑巌さん=横浜市中区
示談書への調印後に会見に臨む、強盗殺人事件の遺族・山崎正則さん(左)と傷害事件の被害者・田畑巌さん=横浜市中区

 2006年に起きた米兵による横須賀市の強盗殺人事件と横浜市西区のタクシー運転手傷害事件を巡り、遺族や被害者と米側の間で17日、損害賠償に関する示談がそれぞれ成立した。米政府と加害者の元米兵の免責を条件に、民事訴訟で確定し未払いのままだった両事件の賠償金の約4割(計約2850万円)を米側が支払う。残額(計約3850万円)は日本政府が負担する。

 両事件では刑事裁判後、遺族や被害者が元米兵に損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。強盗殺人事件は09年に約6570万円の支払いを命じる判決が、傷害事件は08年に135万円の支払いを命じる判決が確定したが、いずれも元米兵からの支払いはないままだった。

 日米地位協定には、公務外で事件や事故を起こした米兵本人に支払い能力がない場合、米政府が慰謝料を支払う制度がある。米側の算定した慰謝料が日本国内の確定判決の認定額に満たない場合は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)の合意により、差額を日本政府が見舞金の形で支給している。

 米側は2015年6月、強盗殺人事件について、この枠組みを念頭に示談を申し入れたが、遺族側は元米兵の免責や米側が全額負担しない点などを不服として拒否。傷害事件も補償が進展せず、防衛省を通じて交渉を継続していた。

 発生から11年後の示談成立に、殺害された女性=当時(56)=の遺族の山崎正則さん(69)は「いくら交渉しても米側は折れなかった。課題は残ったが、苦渋の思いで決断した」と語った。傷害事件の被害者の田畑巌さん(71)は「やっと区切りがついた」と述べた。

 防衛省は「支払いなどの事務手続きについて努力するとともに、米軍関係の事件・事故の防止に努めたい」とコメントした。

遺族ら苦渋の決断


 最愛の人の命を米兵に奪われた上、民事上の賠償責任も果たされないままだった横須賀市の強盗殺人事件は、今回の示談で一つの区切りを迎えた。ただ、遺族は必ずしも全てを納得して判を押したわけではない。「米兵犯罪なのに、日本政府が肩代わりする制度が本当に健全なのか」-。遺族の問い掛けが重く響く。

 横須賀の事件で元米兵の男への賠償命令が確定したのは2009年。無期懲役で服役中の男の支払い能力は当初から疑問視されたが、米側が示談を申し出たのは15年6月になってからだった。訴訟の認定額の約4割を提示し、元米兵の免責も条件とした。

 こうした申し出に遺族は反発。「元米兵自身は一銭も払わず、反省の意思も示されていないのに、免責などできない」「米兵が犯した事件であり、米側が全額を払うべき」。殺害された女性の婚約者だった山崎正則さんは、理由をそう語る。

 それから2年以上が経過した今回の示談は、山崎さんにとっても苦渋の選択だった。交渉の過程で防衛省は、今後同種事案があった場合、加害米兵の免責を条件から削除するよう米側に働き掛けると約束。山崎さんに示談を決断させる大きなポイントとなったが、口約束に終わる不安はやはり消えない。米側の負担がわずか4割にとどまる点も課題として残った。

 賠償金の一部を日本政府が負担する仕組みは、1995年の沖縄少女暴行事件を機に、翌96年のSACO合意で導入されたものだ。防衛省南関東防衛局によると、過去の適用件数は13件で、日本政府の支払い総額は約4億2800万円に上る。

 山崎さんの代理人の中村晋輔弁護士は「被害者救済のため、現状ではこの制度を利用せざるを得ないが、被害者の痛みをきちんと分かってもらうためにも本来は米側が全額を支払うべきだ。適用例が少なくSACO合意の問題点が広く理解されていない面もあり、今回を機に運用改善が図られることを期待したい」としている。

横須賀の強盗殺人事件 横須賀市の路上で2006年1月、通りすがりの会社員佐藤好重さん=当時(56)=が米空母キティホーク乗員の男に襲われ、現金1万5千円を奪われて殺害された。横浜地裁は同年6月、強盗殺人罪で無期懲役の判決を言い渡し確定した。

横浜のタクシー運転手傷害事件 横浜駅東口で2006年9月、タクシー運転手の田畑巌さんが料金を請求した際、乗客だった米海軍の3等兵曹の男に殴打され、鼻の骨を折るなどの重傷を負った。横浜地裁は07年7月、傷害罪で懲役1年2月の実刑判決を言い渡し確定した。

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