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studioFLAT・大平暁
【ひとすじ】アートは壁を超える 

社会 | 神奈川新聞 | 2017年11月17日(金) 13:52

障害者通所施設「セルプきたかせ」で絵画講師を務める大平暁さん=川崎市幸区北加瀬
障害者通所施設「セルプきたかせ」で絵画講師を務める大平暁さん=川崎市幸区北加瀬

 JR新川崎駅近くの障害者通所施設「セルプきたかせ」(川崎市幸区北加瀬)の3階食堂。その一角は施設利用者が絵画活動を行う際のアトリエとなる。

 色鉛筆を握りしめた女性は手を盛んに動かし画用紙に色を重ね、若い男性は淡い色の絵の具でパステルカラーの不思議な模様を紡ぎ出す。別の男性は大きなキャンバスに向かい、配管が細かく入り組んだ「工場画」を真剣なまなざしで描き入れていた。

 彼らはアート作品を扱う「studio FLAT(スタジオフラット=以下FLAT)」の作家でもある。

 「都内のギャラリーで発表すると、作品を買ってくれるファンもいる。商品のデザインにも多数採用され、ワンピースやスマホカバー、雨傘、靴下などが実際に販売されている。彼らの作品はアートとして評価されているんです」

 FLATを主宰する大平(おおだいら)暁(さとる)さん(46)=同区小倉=はこう話す。多摩美術大出身で同施設の絵画講師でもある。7年前から毎年、自閉症などの知的障害がある施設利用者とアーティストがコラボする「FLAT展」を都内で開いてきた。

 「『障害があるのに上手に描けているね』という評価のされ方をしがちだが、評価のものさしが増え、抽象的な作品でも商品のデザインに使われる時代になってきている。彼らの持つセンスや色感を生かしながら、アートとしての価値を見いだしていくことが私の役割だと思っています」

 FLATの所属作家は現在13人。障害のある人の作品をデザインや広告で使う企業との仲介を行うNPO法人「エイブルアート・カンパニー」の登録作家(全国で104人登録)も4人いる。企業から著作権使用料がNPO法人を通じて支払われている。

 彼らのアート活動を発展させようと、2016年につくったのがFLATだ。名称には「障害のあるなしにかかわらず、作品の魅力そのものをフラットに感じてもらいたい」との願いを込めた。作家の才能を生かし、経済的な自立につなげることを活動の目標にしている。

出会い


 大平さんの元に絵画講師の依頼があったのは10年前。開所したばかりのセルプきたかせには、絵画活動を通じた就労支援を導入したいとの考えがあったからだ。

 大平さんは障害のある人と深く関わった経験がなく、当初は「どう接していいか、わからなかった」。最初にマンツーマンで向き合った自閉症の下川慧祐さんとの出会いは思い出深いものだった。

 話し掛けても全く相手にされずに悩む日々が続いたが、やがて転機が訪れる。パニックを起こした利用者に大平さんが腕をかまれてけがをした時、下川さんが「痛い、痛い」と言ってばんそうこうを持って来てくれたのだ。大平さんは「知らないうちに心が通じていた」と気付かされた。

 「焦らずに待つこと、共感を持って寄り添うこと。そうした大切なことを下川さんから教わった」。次第に絵の助言も聞いてくれるようになり、作品のクオリティーは上がっていった。

 下川さんを作家としてプロデュースし、作品を発表したい思いも強まっていった。しかし、目指すべき目標が見えてきた10年10月、下川さんは持病のてんかんで亡くなってしまう。21歳の若さだった。

 「もっと早く彼の作品を発表するために頑張ればよかった」。その時に味わった後悔がFLATの活動につながっていく。翌年の11年2月、第1回のFLAT展を都内・代官山のギャラリーで開き、会場には亡き下川さんの作品を中心に並べた。

 以降、毎年開催している。後に続く作家らの作品も評価が高く、ホテル関係者が館内に飾るために作品をまとめ買いしてくれたこともあった。

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