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震災、がん越え新楽章 坂本龍一さん記録映画公開

社会 | 神奈川新聞 | 2017年11月14日(火) 02:00

東京国際映画祭で「SAMURAI賞」のトロフィーを受け取り、おどける坂本龍一さん=11月1日、都内((C)2017 SKMTDOC, LLC)
東京国際映画祭で「SAMURAI賞」のトロフィーを受け取り、おどける坂本龍一さん=11月1日、都内((C)2017 SKMTDOC, LLC)

 音楽家の坂本龍一さん(65)の音楽と思索の旅に迫ったドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」が今月から都内などで上映が始まった。2012年から5年間密着した映像では、東日本大震災の被災地訪問や中咽頭がん告知を機に、自身の音楽スタイルや生き方を見つめ直した坂本さんの新境地が描かれている。

被災ピアノ


 100分余りの映画は、坂本さんが津波で傷ついたピアノと向き合うシーンから始まる。12年1月、宮城県名取市の県立農業高校体育館を訪ねた時のことだ。側面には津波をかぶった痕跡を示す白い横筋が刻まれ、海水でべたついた鍵盤は押しても戻らない。調律が狂ってしまっていた。

 場面は、事故のあった東京電力福島第1原発周辺の福島県双葉町に切り替わる。震災から丸3年の14年3月11日。がれきが散乱して誰もいない「帰還困難区域」を、防護服姿の坂本さんが歩く。


映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」の一場面((C)2017 SKMTDOC, LLC)
映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」の一場面
((C)2017 SKMTDOC, LLC)


 荒れ果てた大地から一転し、スクリーンには首都・東京の首相官邸前の様子が広がった。

 「(福島の惨状を)見て見ぬふりをすることは、僕にはできない」

 原発再稼働反対デモに坂本さんも加わり、声を張り上げた。


映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」の一場面((C)2017 SKMTDOC, LLC)
映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」の一場面
((C)2017 SKMTDOC, LLC)


 しかし、予期せぬ苦難に襲われる。同年6月、がんを宣告されたのだ。構想していたアルバムのアイデアを白紙に戻す事態になり、治療がいつ終わるか分からないため全ての仕事を取りやめることになった。

突然の宣告


 観客の前に、ニューヨークにある坂本さんの自宅リビングが映し出される。

 「2014・7・25。今日からいよいよ、治療が始まります」

 息子が回すビデオカメラに向かって独白する。

 トレイに10粒前後並べた薬を一つ一つつまみ、口に含んでいく。がんの患部が喉のため、一粒飲み込むのにも苦労する。バナナなどのフルーツも小さく切り分け、ゆっくりかみ砕く。食事を十分に取れず、体重は10キロ以上減ったという。

 1978年に26歳でアルバム「千のナイフ」でデビューした坂本さんは、細野晴臣さん、高橋幸宏さんと結成した「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」名義でアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」を同年発売。ポップロックとシンセサイザー音を融合させた革新的なサウンドは、世界を驚かせた。

 以来、走り続けた40年。加齢を自覚した40代から身体のケアに努めていたため、がん宣告は寝耳に水だったという。

 坂本さんが再び独白する。

 「がんになるなんて、百万に一も疑っていなかった。でも、(ずっと走ってきて)立ち止まるきっかけになった。天から与えられた休養期間だったのかもしれない」

「自然」の音


 坂本さんは自分の意のままにならない病と向き合う中で、人間の力が及ばない「自然の音」により意識が向くようになったという。人間が生み出した原発や核兵器といったテクノロジーに批判的なのはもちろんのこと、自身の創作の源泉となってきたピアノにも懐疑的なまなざしを向ける。

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