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IR考 記者の視点・佐藤百合(下)
バラ色のシナリオ示す横浜市 民主主義を軽視するな

社会 | 神奈川新聞 | 2019年12月5日(木) 22:45

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を誘致したい為政者と、IRを運営する企業幹部で重なった、「『IR=カジノ』ではない」との概念。

 IRが二つ稼働するシンガポールの地で抱いたデジャビュ(既視感)は、これだけではない。

依存症「規制で防ぐのは不可能」


人工の運河が流れ、吹き抜けの空間に高級ブランド店が立ち並ぶ空間は、自分がどの国にいるか、分からなくもした=11月16日
人工の運河が流れ、吹き抜けの空間に高級ブランド店が立ち並ぶ空間は、自分がどの国にいるか、分からなくもした=11月16日

 「初めはみな、自分がギャンブル依存症だとは気付いていない」

 そう教えてくれたのは、民間の支援団体「ブレスト・グレース・ソーシャル・サービス」だ。

 二つのIR、「マリーナベイ・サンズ(MBS)」と「リゾート・ワールド・セントーサ(RWS)」が開業したのは2010年。団体はそれから4年後、活動を始めた。

 発足当初から、ギャンブル依存症だけでなく、借金問題の相談にも応じ、患者やその家族が、同じ境遇にあえぐ人々と経験を共有し合うことで、克服へとつなげる取り組みを続けてきた。

 毎週末に開かれる集会に足を運ぶ人々は、約100人。その数は年々、増えている。借金に苦しみ、助けを求め、団体を頼って、初めて自覚するのだという。自分は依存症患者だ、と。

 団体の言葉はそのまま、横浜で聞いた言葉と重なった。

 横浜市中区の寿地区で、長く依存症患者を診察している越智祥太医師(51)は、患者に見られる傾向をこう指摘する。

 「20代でギャンブルを始めてから借金を繰り返し、40~50代でそんな生活に疲れ果て、自ら福祉事務所に相談する。つまり、依存症を自覚するまで20年以上かかるということだ」

 シンガポール政府は、自国民に厳格なカジノ規制を敷いているといわれる。今年4月には、自国民に対する入場税を見直し、1回当たりを100シンガポールドル(約8千円)から150シンガポールドル(約1万2千円)に引き上げた。

 一方、日本のIR整備法では、入場料を6千円と規定している。

 団体は、厳しいとされる自国の規制をどう評しているのか。今は団体に所属する元依存症患者からは、くしくも横浜の元依存症患者と同じ言葉が返ってきた。

 「高い入場料があっても『勝って取り返せばいい』と思う。規制で依存症を防ぐのは不可能だ」

「国民生活には関係ない」

 依存症にまつわる数字で、気になるものがある。

 「IR事業者が公開した情報によれば、カジノへの訪問者数における地元民の割合は、20~30%と報告されている」

 二つのIRが開業して2年後の12年、シンガポール政府の大臣代行の、議会での答弁だ。

 IRの収益の6、7割を稼ぎ出すカジノ。その利用者のうち、シンガポール国民は2、3割という。

 自国民がカジノを利用しないのは、なぜか。シンガポールの病院で栄養士として働く友人(28)に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 「入場税が高いから、国民はほとんどカジノに行かない。観光客向けの施設だから、国民の生活には直接、関係ない」

 かたや、横浜市のIR構想はどうか。

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