時を刻まなくなった時計が、あの日の教訓を静かに伝えている。
針が指す9時29分。相模原市緑区川尻の料亭「割烹(かっぽう)やな川」創業者、柳川静徳さん(86)、節子さん(83)夫婦が、住み慣れたわが家と店を奪われた瞬間だ。
台風19号の土砂崩れで被災してから1カ月余り。毎日のように心配してやってくる常連客や住民のため、店の駐車場にテントを立て、お茶を出す。そして、押し流されて全壊した自宅の写真を手に、時計を示しながら「早めの避難が大切だと話すようにしている」と静徳さんは言う。