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国含め3億円賠償命令
アスベスト第2陣訴訟、メーカー責任も認定 横浜地裁

社会 | 神奈川新聞 | 2017年10月25日(水) 02:00

横浜地裁
横浜地裁

 建設現場でのアスベスト(石綿)対策を国が怠ったため肺がんや中皮腫になったとして、県内の建設労働者と遺族61人が国と建材メーカー43社に計16億7400万円余りの損害賠償を求めた「建設アスベスト神奈川第2陣訴訟」の判決が24日、横浜地裁であった。大竹優子裁判長は国とメーカー2社の賠償責任を認め、原告39人に計約3億円を支払うよう命じた。

 賠償を命じられた2社はノザワ(神戸市)とニチアス(東京都)。同種の集団訴訟はこれまで全国の6地裁で判決があり、メーカー責任を認めたのは昨年1月の京都地裁に続き2例目、国への賠償命令は6例目となった。27日には一審で唯一全面敗訴となった神奈川第1陣訴訟の控訴審判決があり、その行方も注目される。

 大竹裁判長は判決理由で、メーカー側は遅くとも1976年までに石綿の危険性の警告義務があったのに怠ったと認定。その上で左官工、タイル工、保温工の計10人について、2社の製品に含まれる石綿が発症原因になった可能性が高いと特定した。一方、他の41社への請求は、原告がどの建材に触れて発症したのか因果関係が判然としないとして退けた。

 国の責任を巡っては、国際的な研究機関の報告などから国内で石綿の発がん性を認める医学的知見は72年ごろ確立し、国も認識していたと指摘。遅くとも76年までに国は粉じんマスクの使用や作業現場への警告表示を義務付けるべきで、こうした規制権限の不行使を違法と判断した。

 一方、個人事業主(一人親方)に対する国の責任については、労働安全衛生法で保護される「労働者」に該当しないとして、従来と同様に認めなかった。

 原告は、1960年代から90年代後半までを中心に、県内の建設現場で大工や左官、内装工事などに従事していた元労働者とその遺族。弁護団は「2社と限定的だが、メーカーが断罪された意味は大きい」と述べた。

 ニチアスは「主張が一部認められなかったことは遺憾だ」、ノザワは「企業責任を認めたのは残念だ」とそれぞれコメント。厚生労働省は「厳しい判決と認識している。関係省庁と協議して対応する」とした。

◆アスベスト(石綿)被害 毛髪の約5千分の1の極細繊維からなる天然鉱物。安価で耐火性や断熱性に優れ、建材の原材料として幅広く使われた。吸い込むと肺の奥に刺さり、15~40年ともされる潜伏期間を経て肺がんや中皮腫を引き起こすことが判明、現在は規制されている。製造・加工工場や建設現場の労働者の健康被害が発覚し、被害者らが各地で訴訟を提起。工場労働者の場合は雇用主側に賠償を命じる判決が定着しているが、建設労働者は工場と違ってさまざまな現場で働くため、時期や場所、どの建材が原因になったかを判別することが困難を極める。

 
 

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