運動神経が破壊され、体中の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者にスポットを当てた写真展「THIS IS ALS IN KAWASAKI」が11日から、川崎市内で開かれる。写真家の武本花奈さん(46)が撮りためた作品を通じて、患者のありのままの日常や思いを伝える。
カメラマンとして活躍していた武本さんは2013年に脳腫瘍が見つかった。書店で自身の病気に関する本を探すうちに、全国に約1万人いるALS患者のことを知り、同じ闘病中の身として関心を寄せるようになったという。
その翌年、会員制交流サイト(SNS)を通じて知り合ったのが川崎市幸区出身のALS患者藤元健二さん=17年死去、享年53歳=だった。体験記の執筆を考えていた藤元さんは、記事に添える写真の撮影を武本さんに依頼。そんな縁をきっかけに、武本さんはALS患者の写真を撮る活動を始めた。
これまでに関東や中部地方を中心に34人のALS患者を取材。「患者さんが本当に思っていることを伝えたい。何回もお会いすることで引き出せる表情もある」と、撮影のためには患者の元へ何度も足を運ぶこともいとわない。
18年からは、ALSで声を失った患者の言葉と撮影した作品を紹介する写真展「THIS IS ALS」を全国各地で開催。6カ所目となる川崎の写真展では、写真パネルや患者のメッセージボードなど20点を展示する予定で、病と闘いながらも生き生きと暮らす患者の姿を発信する。
「藤元さんの出身地で開催できて光栄。川崎は特に患者さんの活動が活発で開催する意義は大きい」と武本さん。「150年も前から治療法が確立されない難病。写真展を通じてALSへの理解が深まり、少しでも早く治療法が確立されてほしい」と話している。
写真展は11~17日にアトレ川崎4階コモレビテラス(川崎区)で、21~28日に幸区役所でそれぞれ開催。17日には、愛知県でALS啓発イベントを主催するフリーアナウンサー平野裕加里さんと武本さんのトークショーも開かれる予定。問い合わせは、幸区役所地域振興課電話044(556)6606。