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事故を機に注目された「かすむ横断歩道」 補修追い付かず

社会 | 神奈川新聞 | 2019年11月8日(金) 11:17

市立小学校近くにある、不鮮明な横断歩道=大和市内
市立小学校近くにある、不鮮明な横断歩道=大和市内

 経年劣化で横断歩道の白線が不鮮明になっている問題が、いまだ解決を見ていない。2016年2月に厚木市内で起きた交通死亡事故を機にクローズアップされたが、道交法に基づいて維持管理を一手に担う県警の補修が追い付いていないという現状は、あまり変わっていないようだ。しびれを切らした県内4市が今夏、「迅速な対応」を求めて県公安委員会に要望。「自治体が費用を負担するから補修させてほしい」と訴える首長もいる。

 「横断歩道の維持管理は、市道であっても県警の業務。『見えなくなっているのに、どうして補修しないのか』と市民から苦情が寄せられているが、(市は)できない」

 大和市内の商業施設で9月20日に行われた、秋の全国交通安全運動の出発式。あいさつに立った大木哲市長は、遅々として改善されない問題に語気を強めた。

 県市長会は8月26日、県の2020年度予算編成に向けた要望書を黒岩祐治知事に提出。その中で、新規要望として、県公安委員会に不鮮明な横断歩道について迅速に対応し、必要な予算措置を講じるよう大和、厚木、鎌倉、茅ケ崎の4市連名で求めた。

 大和市では「横断歩道が消えかけている」との市民らからの指摘が16~18年度で約350件あったが、改善したのは約30件にとどまった。


不鮮明な横断歩道近くにある外側線などは市が維持管理しており、その鮮明度は対照的だ
不鮮明な横断歩道近くにある外側線などは市が維持管理しており、その鮮明度は対照的だ

 大木市長は「知事に改善を何度も要望し、財政事情で早期に実現しないのならば、市から金を出しても良いと言っている」と述べ、地元負担で補修対応する考えも示した。

 そもそもこの問題は、厚木市内で起きた交通死亡事故を契機に浮上した。16年2月、同市下依知の市道で、横断歩道を渡っていた下校途中の女子児童が車にはねられて死亡。以前から消えかかっていたことが問題視されていたため、市議会で取り上げられた。市も、県や国と協議して権限委譲や費用負担など対策を模索してきたが、地方財政法など制度上の壁もあり、進展していない。

 それから3年半。小林常良市長は今年9月の市議会で、その後を問う田口孝男氏(ネクストあつぎ)に対し、「県警は集中的に塗り直したと言っている。しかし、不鮮明の箇所を全てやったのか。その後、消えてしまったというのが現状だ」と継続的な取り組みの必要性を指摘した。

 なぜ、こうした状況が続くのか。路面標示の維持管理は道交法で定められている。通学路の注意喚起のための「スクールゾーン」や舗装のカラー化などは地元の市町村が行う一方、交通規制が伴う横断歩道や一時停止線などは県警が請け負う。

 県警交通規制課によると、バブル景気崩壊以降、県財政の悪化で関連予算が削減されて次第に問題化。不鮮明になっていたのは15年9月現在、約9500カ所あったことが調査で分かり、対応に着手した。

 同課は「16年度以降、関連予算の増額を維持し、補修を進めている。限られた予算の中、県内全域でバランスを取りながら実施しており、要望を受けても実施まで時間がかかってしまう箇所も出ている」と説明している。

 
 

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