
超大型の台風21号が通過した23日、神奈川県内の沿岸各地で高潮と高波の被害が相次いだ。三浦市の城ケ島では飲食店などが大破し、横須賀市内では多数の住宅が浸水。藤沢市の江の島ではヨットが横倒しになるなど被害が多発した。ただ、各市町とも全容はつかめておらず、確認を急いでいる。
三浦市・城ケ島の灯台近くでは、飲食店や倉庫など数棟が大破。横須賀市の久里浜港付近は高潮の影響で住宅やアパートなど10棟ほどが浸水し、通行止めになった海沿いの県道では堆積した砂の撤去作業が夜まで行われた。

両市の相模湾側に加え、平塚、鎌倉、逗子の各市や葉山町でも高潮が原因とみられる被害の情報が寄せられており、各市町が調査を進めている。
江の島も被害が目立ち、保管されていたヨットが相次ぎ転倒。防波堤脇の県営駐車場は路面が波打つなど激しく損傷し、観光名所の「江の島岩屋」も立ち入り禁止になった。

横浜地方気象台は22日夜の段階で高潮警報を発表。23日朝には三浦市で本来の潮位より70センチ程度高い状態が観測され、小田原でも潮位が1メートル以上高い時間帯があった。気象台は「高潮で潮位が高まった状態に高波が加わり、破壊力が大きくなった」とみている。
今回の台風では、横浜、茅ケ崎、逗子市で計7人が強風で転倒するなどして重軽傷。川崎市内では台風通過後の風の影響などで4人が負傷した。風雨の影響によるJR各線の遅れや運休は計173本に上り、約14万6千人に影響。延べ約16万5千軒が停電した。

「道路が川のように」
「50年以上、店を営んでいるけれど、こんなに大きな被害は初めて」。三浦市の城ケ島で、高潮の被害を受けた飲食店の女性経営者は途方に暮れる。屋根や一部の柱は残ったものの、店内はめちゃめちゃになり、再開は見通せない。「今後のことは分からない。どうしたらいいのか」
女性は別の場所に住んでおり、被害発生時の現場を直接見ていないが、近くで状況を確認した消防団員は「身の危険を感じた」と証言する。

住宅にも浸水の影響が及んだ横須賀市の久里浜港付近では、住民が宅内の片付けなどに追われた。床下浸水となった主婦は「午前6時ごろに外を見ると、玄関の扉のぎりぎりのところまで水が来ていた。さらに水位が上がるのではと不安だった」。自宅周辺の冠水状況を目の当たりにした女性会社員は「道路が川のようになっていた」と振り返った。
湘南港ハーバーマスターの男性は午前6時半ごろ、江の島に車で着いたが、冠水していてしばらく通れなかった。アスファルトがめくれ上がるなどした県営駐車場の状況に「満潮と重なったためだろうか。波の威力がとにかく強かったようだ」と驚いていた。



