「めちゃくちゃ印象に残る男でね」。かつて横浜法律事務所(横浜市中区)に所属した岡田尚弁護士(74)は、採用面接で相対した坂本堤弁護士の姿が忘れられないと話す。「質問に答える感じではなかった。しゃべりたい、聞いてくださいって感じ」
弁護士として何をやりたいのかを尋ねると、少年事件と障害者問題との返答があった。同事務所は労働事件を数多く手掛けていた。「でも彼が言うには、労働者は組合があって首を切られても立ち上がれると。だが、少年や障害者は権利侵害があってもどう反論していいのか分からない。だから、一番助けを必要としているのはその人たちだって熱弁を振るったんだ」
命とか人間とか、そういうのを丸ごと考えるやつだった-。それが岡田弁護士の坂本弁護士像という。
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大木博さん(57)の冤罪(えんざい)事件で弁護人を務めた城北法律事務所(東京都豊島区)の阿部哲二弁護士(64)も、同じような印象を抱く。坂本弁護士は同事務所での4カ月の司法修習が終わった後も、無罪判決が出るまで大木さんに寄り添い続けた。判決後の新聞に「知恵遅れの青年が無罪」といった記事が載り、大木さんと一緒に真剣に怒っていたという。