【時代の正体取材班=石橋 学】福田紀彦市長と市議会に宛てた要請書には条例素案に対する12項目の提案、改善点が理由とともに記されている。会見の冒頭、師岡康子弁護士は「被害者救済のため一日でも早く条例を成立させる必要がある。今回の要請は最低限取り入れてほしいものに限った」と強調した。ヘイトスピーチ対策について自治体からアドバイスを求められることもしばしばで、全国の取り組みに精通するからこその指摘が説得力をもって響いた。
「人権侵害の被害者に対して『相談の実施その他の必要な支援に努める』という努力規定では弱い。東京都国立市の人権平和基本条例のように『人権救済のために必要な措置を講ずる』と、市の責務を強めるべきだ」。一つ一つに力がこもるのは代理人として被害者に寄り添ってきたからでもある。「現行法では相談しても、窓口で法務局に行ってください、裁判をしてくださいと言われるばかりでほとんどが泣き寝入りだ。裁判をやらなくても救済されるよう、オンブズマンの拡充など具体的な制度を設けると条例に明記してほしい」
ヘイトスピーチに対処する条例を既に持つ大阪市を引き合いに、より実効性のあるインターネット対策を求めるのも、取り組みを一歩でも前進させたいという思いがあるからだった。
教訓を踏まえて
川崎市の素案にはネット上のヘイトスピーチの拡散防止措置が盛り込まれた。差別的言動と認定した書き込みをネット企業に削除するよう求めるものだ。