
台風19号の記録的豪雨で貯水量の限界を超す恐れがあるとして、県が12日夜に実施した城山ダム(相模原市緑区)の「緊急放流」。大量の水放出に伴い相模川下流域で大規模水害が危ぶまれる中、県が開始時刻を二転三転させたことが沿岸市町の混乱に拍車を掛けた。「命を守る行動を」-。緊迫した約4時間の放流は氾濫など大きな被害を招くことはなかったが、自治体間の情報伝達に多くの課題を残した。
【台風19号】知事、ダム緊急放流に「情報伝達を検証」
【台風19号】大きな浸水被害はなし 城山ダム緊急放流
12日午後9時15分ごろ、県庁で県土整備局の電話が鳴った。「もう持たない」。切迫した声の相手は、城山ダム管理事務所に詰めていた幹部職員。ダムの水位はこの時点で、緊急放流の基準まで1メートルに迫っていた。ダム建造以来初となる緊急放流が始まったのは、その約15分後だった。
台風接近に備え、県は10日から相模川流域の8市町に緊急放流の可能性を伝えていた。11日午後2時からは、事前に貯水量を減らす「予備放流」を実施。水位を4・5メートル下げてゲートから放流できる下限まで減らし、大量の水を受け入れる容量を確保した。
しかし、城山ダム上流部の雨量は観測史上最多の800ミリに達した。