
鎌倉市稲村ガ崎で4月、崩落した歩道の地下で下水道管が破損し、下水を一時海に放流していた問題は、地中の空洞が拡大したことによる地盤沈下が原因で起きたことが分かった。専門家などと調査を行った市は「波や地下水の浸食で生じた地形が影響した特異なケース」としている。
破損したのは、国道134号の歩道約2メートル下に埋設されていた下水道管(直径80センチ)。破損の1週間ほど前、現場に隣接する東側の斜面が一部崩落し、歩道も陥没していた。
市によると、崩落と陥没は地盤沈下が原因で、その後も沈下は続いた。これに伴って下水道管を支えていた地盤も下がり、管の継ぎ目が破損して漏水したと考えられるという。
地盤調査の結果、深さ約10メートルの地中に、波による浸食でできた幅、奥行きとも約20メートルのくぼみ(ノッチ)があることが分かった。土砂などで埋められてはいたが、50年以上前の国道建設時から浸食や海への土砂の流出、風化などが進んで強度が失われ、くぼみの上部に空洞が形成された。
これに加え、今年3月上旬に激しい雨が降り、陥没の当日にも強い雨を記録。その結果、地下水量が増えてくぼみの中の土砂が流失し、空洞が拡大したとみている。
調査に携わった静岡大農学部の土屋智教授は「(くぼみや空洞は)通常の道路管理では確認できず、自然災害の原因としても特異」と指摘。市は、破損した下水道管周辺の地盤を薬液で固め、新しい管を追加して本格復旧を進める方針だ。
市内では、高度経済成長期に集中的に整備されたインフラの老朽化対策も喫緊の課題。市都市整備部は「下水道管や道路など重要なところから早急に更新、補修していく必要がある」と話している。
◆稲村ガ崎の下水道管破損問題 4月14日に稲村ガ崎1丁目の国道134号の歩道が陥没。地下の下水道管が破損し、同22日に漏水が判明した。市は仮設管を設置したが送水量を十分に確保できず、消毒処理した下水を海に放流する緊急措置を取った。放水量は開始時点で1日当たり2万2千立方メートル、1万7千世帯分で、水質調査では基準値を上回る大腸菌群も検出された。5月27日に仮設管増設が完了するまで放流は1カ月続いた。