会場となるとどろきアリーナ(川崎市中原区)が台風19号で浸水し、開催が危ぶまれたバスケットボールBリーグ川崎ブレイブサンダースの試合が、予定通り16日夜に行われた。床が変形するなどの被害に見舞われたが、スタッフが総出で復旧作業に尽力。仮設のコートをつくって対応し、会場はいつも通りの熱気に包まれた。
ブレイブサンダースが本拠地とする同アリーナはメインアリーナの床が1センチほど、事務所が約2センチの浸水被害に遭った。出入り口前の広場は30~40センチも水に漬かり、土のうを並べて建物内への浸水を食い止めようと試みたが、被害を免れなかった。メインアリーナは水を吸収して床板が変形。全面にささくれやそりが発生し、安全に競技ができる状態ではなかったという。
台風襲来の翌日からアリーナのスタッフ約20人で水のかき出しや消毒などの復旧作業に当たり、3日間の臨時休業の後に営業は再開できた。しかし、メインアリーナは床板の張り替えが必要で、通常通りには使用できない。試合は床の上に新たに板を敷き詰めて仮設のコートを作ることで何とか開催にこぎ着けた。
被害を受けてから初めてメインアリーナを使用する催しとなった富山グラウジーズとの一戦は、平日開催にもかかわらずチケットが完売。試合前には両チームの選手らがベンチ前に整列し、約4千人のファンとともに犠牲者に黙とうをささげたほか、チームスタッフらが被災地支援のための募金を集めた。
試合前に行うチームミーティングでは、ブレイブサンダースの佐藤賢次ヘッドコーチが「試合ができることに感謝し、気持ちが伝わるプレーをしよう」と選手たちを鼓舞したという。チームは惜しくも敗れたが、最後まで勝敗が分からない大接戦で会場の興奮は最高潮に達していた。
「たくさんの方々のおかげで試合ができてうれしく思う」と主将で日本代表の篠山竜青選手。「台風が来たときは(試合で)新潟にいたが、武蔵小杉駅周辺など川崎が甚大な被害を受けていることは聞いていた。こんなにしっかりと整備された環境で試合ができるなんて思ってもいなかった」と感謝の言葉を口にした。