県内にことし開設された海水浴場の利用客数が、3日までに出そろった。好天に恵まれた昨夏からは一転、今夏は台風の停滞や天候不良が影響し、多くの海水浴場で客足が伸び悩んだ。ただ、近年は余暇の多様化などから行楽客の海離れが指摘されており、関係者からは嘆き節だけでなく、ビーチに人を呼び込む工夫の必要性を指摘する声も聞こえてくる。
がっくり
「自然相手の商売。ある程度は覚悟はしていたけれど、これほどまで客数が悪いと参っちゃうよ」
海の家でつくる「江の島海水浴場協同組合」(藤沢市)の新井進理事長(64)はため息をつく。
毎年多くの若者らでにぎわう藤沢市の片瀬西浜・鵠沼の海水浴場は、閑古鳥が鳴いた。新井さんはほぼ半世紀、片瀬西浜・鵠沼でパラソルや浮輪などを貸し出す海の家を営んできたが、ことしは初めてシーズン終了前に片付けたという。
市内にある3海水浴場の利用客は計153万9060人。市に記録が残る1960年以降、69年(約150万人)に次ぐ2番目の少なさとなった。
お盆直撃
隣の鎌倉市では、市内の3海水浴場(材木座、由比ガ浜、腰越)の利用客は計59万6700人。前年から9万5千人減り、過去10年で最少となった。
西湘地区も多くで前年よりダウンした。1885年に開設され、日本最古の歴史を持つとされる大磯町の大磯海水浴場は前年から2万人以上減の約6万人にとどまった。
各自治体の担当者が要因として挙げるのが、やはり天候不良だ。台風5号が停滞した上、「最もにぎわう」(各自治体担当者)お盆の時期に曇りや雨の日が続いたことなどから、客足が伸びなかった。
リゾートプールとして毎年20万人前後が利用する大磯ロングビーチ(大磯町)は例年、利用客数を明らかにしていないものの、同社広報は「7月までは例年の4割増の来場があったが、8月の日照不足の影響は否定できない」としている。
今後は?
一方、新たな試みで利用客のプラスにつなげた海水浴場もある。三浦市内5カ所の海水浴場は計約51万3千人と、前年より約1万1千人増加した。
市観光商工課は「三浦海岸にことし海の家兼ライブハウスがオープンしたこともあり、三浦を選んでもらえた」と効果を口にする。前年比約7%減と大打撃を免れた茅ケ崎市のサザンビーチちがさき海水浴場でも、海の家でイベントを開催するなど集客へ結ぶ仕掛けに努めているという。
各種の規制が施されて地域との共存が進む中、関係者はビーチでの過ごし方に変化を感じている。
海の家でつくる由比ガ浜茶亭組合の増田元秀組合長(56)は「ことし顕著に感じたのは泳がなくなっていること。飲食の売り上げは悪くなかったが、ロッカーやシャワーの利用がかなり減っている」と話す。
小田原市の御幸(みゆき)の浜では、マリンスポーツやビーチスポーツなどを楽しめるビーチパーク構想も動きだしている。同組合長は「レジャーが多様化して利用傾向が変わってきているから、そのニーズに対応することが重要になってくる」と語った。