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ヘイトスピーチ考
時代の正体〈528〉名誉毀損訴訟(下)差別ビジネスを「断罪」

社会 | 神奈川新聞 | 2017年10月4日(水) 14:21

判決後に記者会見する有田氏(左)と神原弁護士
判決後に記者会見する有田氏(左)と神原弁護士

【時代の正体取材班=石橋 学】人種差別団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)前会長の桜井誠(本名・高田誠)氏の訴えを退けた判決の約1時間後に開かれた9月26日の記者会見。解散総選挙へ向け政局が風雲急を告げる中、永田町から霞が関の記者クラブに駆け付けた有田芳生氏は表情を緩めることなく「ヘイトスピーチに反対する全国の多くの人たちの声、世論の高まり、弁護団のおかげで勝訴することができた」と切り出し、これだけは言っておきたいといった調子で力を込めた。

 「ヘイトスピーチ解消法施行から1年以上たったいまも、公職選挙法に守られてヘイトスピーチが行われ、ネット上のヘイトスピーチは収まるどころか拡大し続け、被害者は一向に救済されない。人種差別を禁じる法整備や自治体における条例制定など対策をさらに充実したものにしていく必要がある。問題はまだ解決していない」

著書もヘイト


 自身が立ち上げた在特会から離れた桜井氏だが、現在は人種差別・排外主義者や歴史修正主義者の団体を束ねる「行動する保守運動」の代表に就く。2016年7月には都知事選に出馬し、11万4千票を獲得。1カ月後に在特会の後継組織、極右政治団体「日本第一党」を結成し、党首を名乗る。

 公職選挙法に選挙演説の縛りがないことを逆手に取り、都知事選では「選挙期間中は無敵だ」と言い放ち、在日コリアンの排斥を公然と唱えた。初めて候補者を擁立した今年6月の都議選では応援演説で「金(キム)正(ジョン)恩(ウン)をたたき殺せ」「日本からたたき出せ」と絶叫した。拉致問題を掲げたデモがそうであるように、もはや北朝鮮批判ですらない悪罵を響かせ、在日コリアンの迫害をそこに重ねた。10分間の演説で候補者の名前を口にしたのはたったの3回だった。

 2万円の会費で約300人を集めた結党大会にその目的が露骨に表れていた。会場入り口には桜井氏の著書がずらりと並び、「あっという間に売り切れた。もっと用意しておけばよかった」という高笑いが響いていた。最高で5千円の年会費を払う党員は1600人に達したと発表された。

 政治活動に名を借りたヘイトビジネス-。

 〈差別に寄生して生活を営んでいるのですから論外です〉

 違法ではないと認定された有田氏のツイートの前提事実について判決は書く。

 「原告の著作は在特会の理念活動、主義主張等を記載したものや、その設立目的、活動理念とその趣旨を共にするものである。そして原告は自己の収入の大部分が著作物の印税収入であることを自認している」

 桜井氏は「在日特権」のデマを臆面もなく持ち出し、「著作物は特権が不合理であることを正当に批判したものであって、ヘイトスピーチとは無関係」と主張したが、判決は「原告の著作物は在特や行動保守の活動を理論的に支えていることからすれば、その活動に際し行われた差別的言動と無関係であるとはいえない」と一蹴。ヘイトスピーチ解消法の定義に照らして桜井氏らの言動が違法な差別的言動に該当すると認定したことを下敷きに、共著を含めて10冊を超える桜井氏の著書についてもヘイトスピーチ、差別をあおる目的だと断じたも同然だった。

姿勢まで問う


 「ヘイトスピーチ解消法ができた意義をあらためて実感した」。被告側弁護団の中心を担った神原元弁護士に続き、判決の意義を語ったのは「ヘイトスピーチとは何か」の著者でもある師岡康子弁護士だった。「何がヘイトスピーチに当たるのかをカタログのように列挙しており、判断する上でモデルになる。具体例があれば認定と対策がやりやすくなる。ヘイトスピーチをなくしていくためにも有益な判決だ」

 ヘイトスピーチは特定の人種や民族、宗教などのマイノリティー(社会的弱者)に対する差別的言動であり、とりわけ差別や暴力をあおるものを指す。桜井氏が言い募る、同じ日本人による日本人へのヘイトスピーチや、マイノリティーから日本人に対するヘイトスピーチなど語義矛盾も甚だしい。

 ヘイトスピーチ解消法2条は定義する。

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