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高1から「働くイメージ」描く 県内でキャリア教育

社会 | 神奈川新聞 | 2017年9月30日(土) 13:04

「職場見学体験」で、指導を受けながら作業に取り組む生徒(右)=相模原市内
「職場見学体験」で、指導を受けながら作業に取り組む生徒(右)=相模原市内

 高校1年生の段階から、職場体験や企業経営者らの講演などを通じ、「働くこと」をより具体的に考える授業が、県内の高校で採用されるようになってきた。学校外からの協力も生かし、働くイメージを早くから培うことで、高校生自身が自分に合った仕事選びや進路を意識することが目的。早期離職の減少につながることも期待されている。

工事現場へ


 夏休み中の8月下旬、横浜市緑区にある建設会社の日建産業(平田恵介社長)を、県立田奈高校(同市青葉区)1年生の男子生徒(16)が訪問した。同校が授業として実施している「職場見学体験」のためだ。

 実際の職場での体験からさまざまなことを学び、自らの適性と進路を考えるために行われている。男子生徒は同社の担当者から業務内容や請け負っている工事の説明を受け、「スコップを使って作業します。暑いから無理しないように」と送り出された。

 体験の場は、相模原市内の工事現場。男子生徒は安全靴とヘルメットを身に着け、掘削する深さを測ったり、土を掘ったりする作業を体験。同社社員から「もっと腰を入れた方がいいね」などのアドバイスを受け、汗を拭いながら約1時間、懸命に取り組んだ。

 男子生徒はアルバイトの経験はなく、仕事に触れたのは初めて。「思ったよりも力仕事。音への気配りなど、思いやりも大切だと知った。働くこと自体がまだ漠然としたイメージだが、仕事を間近で見て、この先自分も社会に出て、その仕組みの中に入っていくんだなと思った」と話した。

 職場体験は緑法人会(吉村寿一会長)が協力し、加盟企業を紹介している。5年ほど前から生徒を受け入れている日建産業は「地域貢献に加え、高校生の職業選択の手伝いができればと考えている」と話す。

自己有用感


 田奈高は、県立高校に5校ある「クリエイティブスクール」の1校。さまざまな困難を抱え、中学校までに持っている力を十分発揮できなかった生徒を受け入れ、きめ細かい教育を展開しており、「キャリア支援」を柱の一つとして掲げている。

 副校長の木村則夫さんは「キャリア支援は、社会的自立に向けた支援」と説明する。同校は1990年代からキャリア教育に取り組んできた歴史があり、2014年度からは総合学習の時間で独自のテキストを使って仕事と自立について学んでいる。

 1年生は職場見学体験に加え、「職業インタビュー」、企業研修を担当する外部講師から、あいさつや言葉遣いなどの指導を受ける「マナー講習」を行っている。「社会ではコミュニケーション能力や一般常識、マナーが重要。それを1年生のうちから知ることが大事」と木村さん。「働くためにはどういう力が必要か、体験することで先を見据えて学習に臨むきっかけづくりにもなる」という。

 校内にはさまざまな社会資源や専門的な知識を持つ外部人材を入れ、連携して生徒を多角的に支援する「キャリア支援センター」も設置。卒業生や中退生の相談にも応じ、離職者も減っているという。木村さんは「不登校などを経験した生徒もおり、高校は再スタートの場所。基礎的な力を付けることは自己有用感にもつながり、それがあるから仕事に励める」と力を込める。

意識変える


 県立厚木清南高校定時制(厚木市)では、17年度から「キャリアデザイン」の授業が始まった。

 1年生を対象にした半期完結の授業。ハローワークと連携した講座や、職業適性検査など働くことに直結する内容に加え、睡眠の取り方、大学生とのグループワークなどもカリキュラムに含まれる。

 7月には、民間の就労支援団体フェアスタート(横浜市中区)の協力で、働く人の体験談を聞く授業が行われた。

 講師を務めた映像翻訳会社ワイズ・インフィニティ(東京)代表取締役CEOの小林雅人さんは、自身の職歴を基に「仕事をどうするかというのは、どんな人になりたいかを考えることが大事」と説明。「人生に無駄はない。自分をよく知り、無駄だと思ったことも経験に、楽観的に考えてほしい」とアドバイスした。

 ソフトウエア会社のアドビシステムズ(東京)からは3人が参加。坂本亮介さんは働くイメージがないまま高卒で就職、挫折した経験などを語った。

 デザイン事務所を皮切りに職を転々とし、ニートも経験。「社会人は結果が全てだが、努力は次に生かせる。でも、頑張り過ぎないことも大事」と話した。真剣な表情で聞き入っていた男子生徒(16)は「やりたいことにすぐにたどり着かなくても、ほかのことを中継してからでもいいんだと知った」と話した。

 同校教諭で授業を担当する佐良土(さろうど)賢樹さんは「社会人や大学生ら外部の人に入ってもらう機会が多く、1年生だけという構成もあってか、熱心に取り組んでいた」という。授業は「なんとなく高校が卒業できればいい」という意識を、「目標の進路のために高校生活を大切に過ごす」という方向に変えることを目的にしている。「少しでも前向きな目標を持ち、授業やアルバイト、学校行事などに取り組んでもらいたいという考えが、授業の根底にある」と話す。

 文部科学省は、キャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義。高校でのキャリア教育の推進・充実の重要性も示している。

 県高校教育課によると、県内の高校でも通常の教科指導を通じて行われているが、取り組みを始める学年などについては、各学校の判断によるという。同課は「早くから取り組むことで、生徒に一定の効果はあるのではないか」と話す。

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