太平洋戦争を経験した市民の話を通し、憲法について考えるイベント「憲法カフェ」が17日、三浦市南下浦町上宮田の喫茶店で催された。市内に住む田中三枝さん(79)が、移住先のフィリピンで戦争孤児となった自らの体験を語った。
田中さんは1940年6月、フィリピン・マニラで理髪店を営む両親の元に生まれた。フィリピンには当時、多くの日本人が移住しており、田中さんも両親、姉と暮らしていた。だが戦況の悪化で避難を余儀なくされた。45年6月28日、避難先の山中で両親が突然、亡くなった。田中さんは「死因は衰弱だと思うが、前の晩まで元気で信じられなかった」と振り返った。
姉と来た道を戻っている途中、米軍に保護された。終戦後、船で日本に戻ったが、幼かった田中さんは両親だけでなく、自身の氏名すら分からず、横須賀市浦賀の養護施設に入所することになった。園長が生年月日や名前を決めて住民票を作成、10歳の時に三浦市内の農家に養子として引き取られたという。
78年にフィリピンに戦後初めて訪れ、3人の兄がいること、兄たちの戸籍で死亡扱いされており、自身の墓が建てられていることなどを知ったという。
田中さんはイベント後、
「戦争でたくさんの人が亡くなった。勝った負けたではなく、どうすれば皆が安心して暮らせるか考えることが大事」などと話した。
イベントは、市民有志でつくる「ストップ戦争!三浦市民の会」が主催した。