核廃絶や恒久平和の思いを世界に向けて発信し、共有する。被爆地広島は今、「迎える平和」を掲げ、平和と観光の両立を図っている。
広島を訪れる観光客は年々増加している。特に顕著なのが訪日客だ。市観光政策部によると、昨年、市内を訪れた外国人は過去最高の178万2千人。7年連続の伸びという。
動きを加速させたのは2016年のG7広島外相会合(4月)と、米国のオバマ前大統領の訪問(5月)だ。特に同年5、6月は広島平和記念資料館(同市中区)の外国人入館者数が前年同月比で50%以上増えた。
「欧米系の外国人旅行者を中心に、『広島で何が起きたのか知りたい』と広島を選ぶ人が多い」と市観光政策部で観光プロモーションを担当する安竹輝昭課長補佐。資料館では食い入るように説明文を読み込み、1~2時間掛けて見学する人も多いという。
追い風を受け、力を入れるのが「ピースツーリズム」だ。「平和」と「観光事業」を組み合わせた造語は市の取り組みを象徴する。
市は17年度に懇談会を設置し、計11回の会合を経て周遊ルートを選定。(1)被爆建造物(2)被爆前後の文化・文学(3)市民の復興の歩み(4)被爆に関する資料館-の4テーマを示した。
被爆前の歴史や文化を知り、それが一瞬のうちに破壊されたこと。原子野から立ち上がり、復興を遂げた現在の姿。そうしたことを肌で感じてもらうため、バスや自転車も使いながら市内各所に点在する被爆の痕跡や資料館などを巡る。水辺の風景や繁華街など、今の広島の魅力を楽しみながら、過去についての学びを深めてもらうのが狙いだ。
周遊ルートにスタート、ゴールはない。途中でお好み焼きを食べたり、買い物をしたりといった楽しみ方も歓迎する。