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依存症回復支えたい 継父の経験胸に 川崎で施設運営

社会 | 神奈川新聞 | 2019年8月21日(水) 11:03

依存症に苦しむ人々を支えようと、施設運営に携わる金井さん =川崎市多摩区
依存症に苦しむ人々を支えようと、施設運営に携わる金井さん =川崎市多摩区

 「世の中から犯罪をなくしたい」-。ギャンブル依存に陥った継父が犯罪に手を染め逮捕された経験を持つ金井駿さん(26)は、そんな理想を抱き2年前に一歩を踏み出した。依存症に苦しむ人々の回復を支援する施設「アルバ」を川崎市多摩区に開設。依存症専門の回復プログラムを提供し、当事者の社会復帰やかつて服役した人の再犯防止に日々奔走している。

 アルバには現在さまざまな依存症を患う20~70代の男女約20人が通所する。なぜ依存症に陥ったのかそれぞれの経験を車座になって語り合ったり、アルコールやギャンブルに求めていたことを振り返ったりして、克服を目指している。

 「自己を客観視して分析し、ありのままの姿をさらすことで回復につながるケースがあります」。施設全般の運営に関わる金井さんは、プログラムの狙いをそう語る。利用者の通院先のソーシャルワーカーから回復具合に驚きの声が上がることもあり、やりがいにつながっているという。

 活動の根底には自身の苦い体験がある。小学生時に両親が離婚。母親の再婚相手は競馬やパチンコにのめり込む人物で、母親との口論も絶えず「家庭内の雰囲気は悪かった」という。

 金井さんが横浜国立大学に進学して1人暮らしを始めた頃、事件は起こった。リサイクルショップに勤めていた継父が店の商品を横流ししていた容疑で逮捕された。「ついに来るところまで来てしまったか」。事件は金井さんの胸にわだかまりとして残った。

 就職先に刑務所出所者らの就労支援会社を選んだのは自然の流れだった。「ギャンブル依存症になり、犯罪を行った父親のいる自分にしかできない」との決意があった。スピード感を持って依存症患者の支援に当たりたいと、2017年4月には独立に踏み切った。

 開業の地として注目したのは、南北に長い市域を持つ川崎市。人口が増えているにもかかわらず、市北部には回復施設が不足しているため支援を待っている人がいるとにらんだ。

 依存症回復施設や精神科病院などは「忌避施設」とも呼ばれ、物件探しで苦労することも少なくない。金井さんも知り合いのつてをたどり、なんとか開業にこぎ着けた。

 金井さんによると、国内でアルコール依存症に苦しむ人は約100万人いるものの、回復施設は大きく不足しているという。「施設に入れない人の中には犯罪に走る人や、自死する人もいると聞く。一人でも多くの人を救うには施設を増やすしかない」

 今月からは施設を増床して対応を強化している金井さんは「依存症はきちんと治療すれば治る。5年、10年かけて実績を重ね、依存症に対する世間の見方を変えていきたい」と意欲を語った。

 
 
 

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