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尼崎JR脱線事故遺族、組織罰を実現する会メンバー
教訓〈中〉安全問う組織罰 組織の「責任」問えず

社会 | 神奈川新聞 | 2017年9月16日(土) 11:48

事故現場で思いを語る大森さん(左)と藤崎さん=6月13日、兵庫県尼崎市
事故現場で思いを語る大森さん(左)と藤崎さん=6月13日、兵庫県尼崎市

 太陽が照りつけ、汗がにじむ。6月13日、兵庫県尼崎市のJR福知山線の線路脇。傍らのマンションは所々を灰色のシートで覆われている。見上げる高さのクレーンが立ち、工事音が鳴り響く中、神戸市在住の大森重美さん(69)は開口一番、つぶやいた。「予想通り(の最高裁の上告棄却決定)」。その真意を続けた。「今までの裁判の経過を見ていれば、無罪になるんだろうと予想できた」

 2005年4月、この地で大惨事が起きた。快速電車が脱線し、マンションに激突。国鉄民営化後で最多の犠牲者となる乗客106人と男性運転士=当時(23)=が死亡、562人が重軽傷を負った。大森さんは長女の早織さん=当時(23)=を失った。

 先頭車両はマンションの1階の駐車場に突っ込み、2両目は外壁に衝突して「く」の字に曲がった。赤茶色の外壁は所々はがれ、コンクリートにひび割れも見える建物は今、事故を後世に残すための一部保存工事が進む。すぐそばを電車が数分おきに通り過ぎるのは、事故当時と変わらぬ光景だ。

 この日、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の歴代3社長に対し、最高裁が上告棄却を決定し無罪が確定する、と報じられた。

 「悔しいですか?」「怒りですか?」。報道陣に取り囲まれ、大森さんは答えた。「怒りなんて、もう(通り越した)…。100人以上が死に、500人以上が傷ついた大事故。それなのに誰も責任を取らない。無念というか、(今の司法は)情けない」

 一人娘の道子さん=当時(40)=を亡くした藤崎光子さん(77)=大阪市=もこの日、上告棄却を聞いた。駅構内のカフェにいたが、記者からの電話が鳴りやまない。戸惑いながら「これで終わりと思いたくない」と繰り返した。その手に握る携帯電話には、道子さんの笑顔を写した写真がストラップとなって付いている。

 マンション近くの献花台には、今も折り鶴や花を手向ける人の姿が絶えない。藤崎さんは大森さんと手を合わせ、線路を見やり言った。「信頼して電車に乗ったのに、今でも謎です。なぜ娘は死ななければならなかったのか」

「司法の限界」


 最高裁は歴代3社長を無罪とした一、二審と同様、「現場カーブの危険性が高いとは認識できず、自動列車停止装置(ATS)の設置を指示する義務はなかった」と指摘した。男性運転士は被疑者死亡のまま書類送検され不起訴。JR側の誰一人として刑事責任を負うことなく、裁判は決着した。

 「これが司法の限界」。大森さんは繰り返す。歴代社長の裁判傍聴や被害者参加制度での意見陳述などを通じ、確信した。「今の法制度では事故の予見可能性を認めるハードルが高い。企業幹部個人の責任は問えない」

 刑法で罰せるのは個人に限られる。大企業では複数の部署にまたがり業務を行うため個人の責任の特定は難しい。幹部の責任を問うても現場から離れた存在だけに、危険性を具体的に知っていたとして事故を予見できた、と認めるのは困難となる。

 組織罰の実現で組織全体の罪を問おうとするのは、個人の責任を問うだけで終わらせては再発防止につながらないとの思いもある。

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