ヘイトスピーチを犯罪として処罰する川崎市の条例づくりへの賛意が実感とともに届けられた。津田塾大(東京都)の学生有志が9日、署名サイトで募った署名4576人分を市と市議会に持参。「市長も市議会も条例の素案で示された罰則を貫いてほしい」。署名集めのさなか、インターネットで一方的に繰り出される卑劣な攻撃を目の当たりにし、刑事罰で規制する必要性を痛感していた。
〈ここは日本だ〉〈嫌なら帰れ〉〈勝手に住み着いて甘えるな。寄生虫〉
7月中旬、ツイッターで署名を呼び掛けたところ、在日コリアンを迫害する書き込みが脈絡もなく押し寄せた。数日で200件を超え、異様な反応に学生たちは恐怖を覚えた。「相手を痛めつけるためのもの」「意見ではなくただのヘイトスピーチ」。1年生の学生(18)は「こういう問題が社会に存在すると身をもって知り、なくすための活動を始めて良かったと思った」と実感を込めた。
授業でヘイト問題を学んだ有志で始めた署名運動だった。へイトデモに襲われた川崎区桜本の在日集住地区を訪ね、当事者から被害の実態を聞いた。ヘイトスピーチに罰金を科す条例がいかに求められているかを知り、「憎悪や攻撃を止められない社会をつくっているのは私たち一人一人」と罰則条例に賛意を示すよう呼び掛けることにした。
否定的な反応は覚悟していたが、醜悪ぶりと数の多さは予想を上回った。ヘイトスピーチだと指摘し、削除するよう求めたが無視された。1年生の学生(18)は「やめてと言うだけではなくならない。強い罰則が必要で条例の意義の大きさを感じた」。同大非常勤講師の原由利子さん(54)は「日本の大学生の活動でこの状態。マイノリティーの当事者であれば危害が加えられかねない」と話す。
一方、賛同の広がりも想像以上だった。海外からも届き、4年生の学生(21)は「主体的に声を上げる大切さを知った」とうなずく。1年生の学生も「多くの人が声を上げれば攻撃にも立ち向かえる」。市は条例についてパブリックコメントをこの日まで募集しており、学生たちは署名を意見として扱うよう求めている。