
ヘイトスピーチに罰則を設けた川崎市の条例素案に賛同する声を届けようと、市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は3日、JR川崎駅前で街宣活動を行った。「実効性が期待できる画期的な条例。市民の声で全会一致の成立を後押ししよう」とアピール。9日まで市が実施中のパブリックコメント(意見公募)への応募を呼び掛けた。
6月に公表された素案では民族や性的指向、障害などを理由にした差別を禁じ、在日外国人への差別的言動を繰り返した者に最高50万円の罰金を科す。12月議会で成立すればヘイトスピーチを犯罪として処罰する初の法規制となる。
呼び掛けに足を止め、賛成意見を用紙に書き込んだ川崎区の女性(72)は「差別はいけないという規範を根付かせるために条例は重要。罰則があるのとないのとでは大違いだ」。勤め先の保育園では年々外国人の子どもが増えているといい、「共に生きていくこの子たちを守るのは私たちの責任だ」とうなずいた。
在日コリアン集住地区の同区桜本を標的にしたヘイトデモに抗議する活動に参加したことのある女性(72)も「ヘイトは日本人がしているのだから、日本人が何とかしないければいけない。問題自体を知らない市民は地元でも多く、条例で犯罪と示される意義は抑止力と教育効果の両面で大きい」と歓迎した。
パブコメを巡っては、「言論弾圧」「日本人差別条例」といった事実誤認や曲解に基づいた反対意見送付の呼び掛けがインターネット上でなされている。同区在住の在日3世の女性(54)は「参政権もなく非力な立場だが、意見を役立ててもらえるなら」とペンを執った。ネットで拡大する「攻撃」に表情を曇らせながら「朝鮮学校にチマ・チョゴリの制服で通うという当たり前のこともできない現状がある。朝鮮人であることを隠さず生きられるよう、条例の実現を期待して見守りたい」。