
相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」の殺傷事件を巡り、県は23日、事件再発防止対策・再生本部会議を開き、同園の施設を現在地で建て替える方針を正式に決定した。黒岩祐治知事は会見で、「施設の全体に血痕が付着するなど甚大な被害が及んだため、改修だけでは適切な支援を継続するのは困難と判断した」などと述べた。開会中の県議会第3回定例会に施設の基本構想策定に関する補正予算案を追加提出する。
黒岩知事は建て替えの理由について、建て替えを要望した入所者の家族会と施設の指定管理者「かながわ共同会」の意向を反映できるとした上で、「再生のシンボルとなるような、理不尽な事件に屈しない強いメッセージを発信していく機会にしたい」と説明した。
建て替えは、事件の起きた居住棟2棟と管理棟が対象。総工費は60億~80億円と見積もっている。2016年度に基本構想策定、17~18年度に基本・実施設計、19~20年度に新築工事を行う予定。
建て替え中の入所者の仮居住先については、県内の県立施設を活用。17年春から順次移動してもらう。
県はこれまで建て替えや大規模改修について検討してきた。一方、今月12日に家族会とかながわ共同会が、それぞれ(1)津久井での建て替え(2)建て替えまでの安定した生活環境の早期整備-を求める要望書を県に提出していた。
再生のシンボルに
「再生のシンボルとし、理不尽な事件に屈しないという強いメッセージを発信したい」。19人が刺殺され、27人が負傷した事件現場となった「津久井やまゆり園」の建て替えには、最大で80億円と見積もられている費用や、工事中の仮住まいへの移動など、県や入所者らに重い負担がかかる。しかし黒岩祐治知事は会見でこう繰り返し、強い決意を示した。