「九州北部の豪雨では、流木と土砂で氾濫が起きたが、この地域の上流でも想定されるのか」。出席者の抱く不安を代弁するかのような質問の声が上がった。県横浜川崎治水事務所の佐藤映・河川1課長が慎重に言葉を選ぶ。「上流までほぼ開発されているので、山が崩れて土砂と一緒に流木が大量に流れてくる事態は想定しにくい」
過去最大級の流木災害となった九州北部の豪雨から20日後の7月25日。神奈川県内最大のターミナル、横浜駅西口(横浜市西区)で水害対策をテーマとした会合が開かれていた。
西口で街づくりに取り組む店舗や事業所などの関係者に県が説明したのは、目の前を流れる帷子川水系の大規模氾濫に関する新たな想定結果。6月に公表された浸水範囲の地図は、地元に波紋を広げていた。
帷子川は旭区を源流とする延長約17キロの2級河川。川幅が狭く流域の市街化が進んでいるため、水位が上昇しやすい。過去にも氾濫を繰り返し、国内の台風上陸数が観測史上最多となった2004年には、1日に300ミリを超える雨で横浜駅周辺が浸水している。
このときを上回る1日390ミリという最大規模の雨で影響を試算した新想定では、旭、保土ケ谷、西、神奈川、中の5区で約5平方キロが浸水。下流域の横浜駅周辺は広範囲に浸水し、商業施設が連なる西口の一帯は、ほぼ全域が水に漬かる厳しい予想となった。
会合の会場となった相鉄ムービル付近の浸水深(浸水時の水位)は局所的ながら5メートル超。地盤の低い東口タクシー乗り場の浸水深は8・5メートルに達する。