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子どもたちに選択肢を 施設退所者支援で連携「AC3」発足1年

社会 | 神奈川新聞 | 2017年9月2日(土) 12:14

7月に開かれたAC3の主催イベント。県内の児童養護施設で暮らす高校生らが参加した=横浜市神奈川区の県福祉会館
7月に開かれたAC3の主催イベント。県内の児童養護施設で暮らす高校生らが参加した=横浜市神奈川区の県福祉会館

 児童養護施設などを巣立った若者を、異なる特色を持つ3団体が協力して支援する「かながわアフターケア3団体連絡会」(AC3)が、発足から1年を迎えた。利用者の状況に応じて、より有効なサポート手段を持つ団体につなぐほか、施設で暮らす高校生や職員向けの合同イベントを開くなど、さまざまな活動に取り組んでいる。

 AC3は、県の事業で施設退所者の相談・支援業務を行う「あすなろサポートステーション」(あすなろSS、藤沢市)、横浜市のアフターケア事業の拠点で、NPO法人ブリッジフォースマイルが運営する居場所「よこはまPort for(ポートフォー)」(同市西区)、施設退所者らを対象にした民間の就労支援団体「フェアスタート」(同市中区)で構成している。

 それぞれ施設を退所した若者に必要な支援を行っており、以前から活動を通じた付き合いがあった。その中で互いの得意分野を生かして連携し、家庭の事情などで施設退所後に頼れる場所が限られる若者を支えようと、昨年2月に連携し、AC3が発足した。定期的に会合を開き、気になる利用者についての情報や、支援ノウハウなどを共有している。

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 「アフターケア」とは、児童養護施設を退所した子どもの支援を指す。

 施設で暮らす子どもは、児童福祉法の規定により原則18歳で退所する。厚生労働省によると、施設で暮らし、2015年度末に高校を卒業した子どもは1818人。そのうち就職したのは1280人で、全体の70%を超える。大学や専門学校などに進学した人は437人(24・0%)。進学した場合など一部に措置延長もあるが、就職した子どもの大半は施設を出ることになる。

 一般の家庭で育った子どもは、学校を卒業したり、就職したりしても親や実家を頼ることができる。だが、家庭にさまざまな事情があって施設で育った子どもは、親を頼れないケースが多い。その状態で「自立」すると、職場の人間関係に悩んだり、金銭的に困ったりしても誰にも相談できないことがある。行き詰まって何も言わずに職場を辞めてしまったり、生活が困窮したりすることにもつながる。

 そんな背景を持って施設を巣立った若者には支援が必要だ。同法は、施設に対し、入所する子どもの養育のほか、退所者の相談や自立のための援助を行う役割を求めているが、職員の多忙さや資金面などの理由から、施設だけで十分なアフターケアをすることは難しい。そのため、そうした役割を担う団体は重要な存在になる。

 連携開始から1年。AC3で中心的な役割を担うあすなろSS所長の福本啓介さんは、「一つしか選べないことは子どもにとって不利益。連携によって、子どもに選ぶ権利が生まれる。その当たり前のことが今までなかった」と一定の手応えを感じている。

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 3団体とも退所者支援を目的としているが、施設に入所しているころから子どもとつながりを持っている場合もある。

 それぞれ「相談」「居場所」「就労」と異なる分野に特化しているため、状況に応じて若者自身が頼りやすい場を選ぶことができれば、「『ここが合わなくても、ほかに行けばいい』と思える」と福本さん。

 この連携は支援する側にとっても心強い。「仕事、生活、それだけではないさまざまな問題を抱えている若者がいて、一つの団体が支え切れるものではない。3団体の連携で施設退所後にネットワークから漏れる子どもたちが減り、負の連鎖を断つことができればいい」と話す。

 よこはまポートフォーは気軽に立ち寄れる居場所として、施設入所中の子どもも含めて229人が利用登録している。スタッフの吉原志麻さんは「垣根がなく、興味のある人は誰でも来てくださいという場所」と話す。利用者が自主的にスタッフの手伝いをしたり、年下の人に声を掛けたりする姿があるのも、居場所の良さだという。

 次のステップに進むための癒やしの場という面も持ち、利用者には体調に不安のある人や、仕事から離れた人もいる。連携前からの団体同士の関係も踏まえ、「時間を重ねたことで、このケースならこの団体につなげるね、ということが互いにスムーズにできるようになった。一緒にやっている心強さがある」と話す。

 フェアスタート代表の永岡鉄平さんは、AC3について「普段は目の前のことで手いっぱいだが、顔を合わせる場があることで、様子が気になる若者について、対処の仕方を聞いてみよう、という機会にもなる」と話す。過去に就職の支援をして、その後離職した人をあすなろSSにつないだり、他団体から退職を決めた若者の紹介を受けたりという動きもあるという。

 連携が支援ニーズの掘り起こしにつながる流れも感じている。企業が働く人を求めていても、紹介できる若者がいないケースがあり、対象者を探すことは課題の一つだが、「単独ではつながれない若者とつながれる」というAC3の良さが糸口になり得る。

 「バリバリと働くことが合う人もいれば、職場の優しいケアが必要な人もいる。選択肢があることが大事。支えを必要としているのに掘り起こされていない若者はもっといるはず」と支援の広がりに目を向ける。

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 17年度からは、主催イベントも始めた。5月は児童養護施設の職員らを対象に、AC3と各団体の活動について説明。7月下旬に行った施設で暮らす高校生向けのイベントでは、「働くこと」を大きなテーマに据え、高校生の就職までの流れや、どんな仕事に就きたいかを早くから考えることの大切さ、条件よりも仕事の内容で就職先を選ぶことの重要性などを解説する講座も開いた。

 次回の合同イベントは、来年3月を予定している。福本さんは「一番難しい状況の子どもが真っ先に自立を強いられる。だから支え手を増やしてあげたい。これが一つのモデルになり、枠組みを超えた連携になっていけば。同様のことが神奈川だけでなく、もっと広がっていけばいい」と期待を込める。

 AC3についての問い合わせは、あすなろSS電話0466(54)8917、メール(shonan.asunaro@gmail.com)。

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