在日米海軍は1日、横須賀基地(横須賀市)に配備されている原子力空母ロナルド・レーガンの艦載機部隊による陸上空母離着陸訓練(FCLP)を厚木基地(大和、綾瀬市)で始めた。米側は訓練期間を6日までとし、日本政府には実施直前に通告。県や地元自治体は「断じて容認できない」と反発し、日米両政府に即時中止を要請した。同基地でのFCLPは2012年5月の夜間離着陸訓練(NLP)以来5年ぶり。
在日米海軍司令部などによると、訓練はFA18戦闘攻撃機、E2D早期警戒機など艦載固定翼機の全機種が参加。期間は1日から6日までの日中で、3日は実施しないとしている。同司令部は厚木基地を選んだ理由について「台風の影響で硫黄島(東京都)で訓練ができず、厚木はすぐに実施する装備が整っているため」と説明。飛行高度を上げるなど人口密集地域に「配慮した」との見解も示した。情報提供が約5時間前の1日午前になったことに関しては、訓練の緊急性を強調した。
空母艦載機は岩国基地(山口県)への移駐が8月9日に本格的に始まったが、騒音被害が深刻なジェットエンジンを搭載したFA18などの移駐開始は11~12月ごろとみられる。米側は厚木基地の重要性を指摘した上で、移駐後も訓練や給油、整備のため「折に触れて使用する」と明言。8月下旬にはFA18が離着陸を繰り返し、E2D早期警戒機が再飛来するなどしていた。
人口密集地域にある厚木基地でのFCLPを巡っては、日米両政府に対し、地元自治体が再三にわたり訓練を実施しないよう求めている。硫黄島で暫定的に行われているが、天候不良などで同島で訓練を消化しきれない場合の「代替施設」に指定され続け、07年と12年にも実施されていた。
黒岩祐治知事は綾瀬市内で訓練を視察後に厚木基地を訪れ、ロイド・マック司令官に「即時中止」を要請。移駐が進む中での訓練強行や事前通告が実施直前だったことを「極めて遺憾」とした上で、「騒音被害に苦しめられている基地周辺住民にさらに耐えがたい苦痛を強いる『爆音』で、断じて許されるものではない」と抗議した。小野寺五典防衛相もハガティ駐日米大使との会談で中止を要請した。大和、綾瀬両市には、8月28日から9月1日夕までの5日間で少なくとも190件の苦情が寄せられているという。
◆陸上空母離着陸訓練(FCLP) 米海軍の空母艦載機パイロットが洋上運用を行うために課せられた定期訓練。陸上滑走路を空母の飛行甲板に見立て、昼夜に着陸と離陸を繰り返す。硫黄島での訓練が天候不良などで未消化の場合などに、厚木、三沢、岩国基地などで行われる。短い間隔で飛行するため、基地周辺では深刻な騒音被害が発生している。