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横浜マンション傾斜問題
住民「やっとスタート」 来春全棟建て替え

社会 | 神奈川新聞 | 2016年9月22日(木) 12:02

傾いている1棟を含む全4棟の建て替えが決議された横浜市都筑区のマンション(共同通信)
傾いている1棟を含む全4棟の建て替えが決議された横浜市都筑区のマンション(共同通信)

 くい打ち問題の発端となった横浜市都筑区のマンション傾斜は、住民らの全棟建て替えという決議で一つの区切りを迎えた。建物の不具合が見つかってから約2年。再入居までは、さらに4年。手続きやコミュニティーの再構築など、やるべきことは山積している。いまだに施工不良の原因報告にさえ至らない事業主らへの憤りも消えない。「まだ道のりは長い。これからがスタートだ」

住民感情


 今月19日、同市緑区で行われた建て替え決議集会。「議案は可決とさせていただきます」。管理組合が全棟建て替えの決議を告げると、400以上の座席を埋めた会場から拍手が起こった。

 しかし、ある住民の表情は浮かない。「10年近く築いてきたコミュニティーが破壊された」。2007年に竣工(しゅんこう)。705戸のうち、すでに半数以上が転居した。恒例の夏祭りや防災訓練も中止になった。小学2年生の長女を持つ男性は7月に港北区に引っ越した。住居面積は以前より狭くなったが「子どもの学区内で借家の空きは少ない。仕方ないと即決した」という。

 通学時間は10分延びた。週末になると、今も生まれ育ったマンションに集まって遊んでいる。転居先で友達ができずに家にこもる子もいると聞かされた。「娘は『さみしい』とこぼしている」

 市は転居先が学区外でも同じ学校に通えるよう特例で認めた。10月3日からは同区内の主要駅と小中学校を結ぶスクールバスが運行する。約120人が利用する予定だ。マンション敷地内にあった保育所は来年4月に場所を移して仮設される。

 マンションへの再入居は20年11月となる見通しだ。管理組合は離れ離れになる住民らのコミュニティーを維持するため、施工中の建物見学会を開催するなど、集まれる場を設けるという。

説明責任


 全棟建て替えが決まっても、事業主らへの不信感は消えていない。

 不具合が見つかったのは14年11月にさかのぼる。住民が2棟の手すりのずれを見つけて事業主の三井不動産レジデンシャルに指摘。同社の回答は「東日本大震災が原因」だった。管理組合は議事録を各戸に配布していたが、「当時の反応は乏しかった」という。

 翌15年9月にくい未達の可能性が浮上。翌月、市がくいの施工不良のデータ流用を発表すると、同社は同月下旬、補修方針を一変させ全棟建て替えを示した。報道により住民の関心も一気に高まったという。

 今年8月には市が建築基準法違反と認定、同社らに是正勧告を出した。しかし、施工不良の原因報告について同社側は延期を繰り返している。管理組合側は問題の原因をつかむため、マンション解体後のくい調査を求めている。

 管理組合によると、転居した高齢者のかかりつけ医への通院交通費は同社が負担を拒否。また、一時転居か売却かで対応も分かれる。売却すれば新築分譲想定価格で同社が買い取るが、引っ越し費用は自己負担。管理組合は「一時転居してまたマンションに戻るという2度引っ越す体力がなく、泣く泣く売却した高齢者もいる」という。

 建て替え費用は慰謝料(1戸300万円)、仮住まい先への引っ越し費用なども合わせると約400億円に及ぶ。同社をはじめ、施工主の三井住友建設、くい打ち施工業者の旭化成建材などが分担することになるが、負担割合は決まっていない。

 来年4月から建て替え工事が始まる。まだ解体、設計、施工業者は決まっていない。ある住民は、2年間を振り返る。「日本を代表する事業主は、われわれと同じような犠牲者を出さないためにも説明責任を果たすべきだ」

管理組合、合意に尽力 99%が賛成



 建て替え決議集会では、区分所有者、議決権総数の99%が賛成だった。区分所有法では5分の4以上が成立の要件。高い割合を達成できた背景には、事業主側が費用負担を表明したことと、管理組合の合意形成への尽力を指摘する声がある。

 
 

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