雷の発する特有の電波を捉えて落雷地点を特定し、感電などの被害防止につなげる市民参加型の観測網が構築され、本格運用を開始している。旗振り役の成田知巳・湘南工科大教授(電力工学)が他大学の研究者や知人の協力を得て、県内を含む全国約20カ所に測定局を設置。落雷の地点と時刻を瞬時に絞り込み、ウェブサイトの地図上で無料公開する試みだ。成田教授は「身近な場所に雷の危険が迫っているかどうかを知り、安全確保に役立ててほしい」と活用を呼び掛けている。
成田教授の提唱で今春から日本国内での運用が始まった「落雷位置標定システム」は、安価な観測装置を置いた測定局で落雷時の電波を捉える。3カ所でキャッチすると、位置や時刻を高精度に絞り込むことが可能で、落雷のあった地点を1~2秒ほどでサイトに表示できる。
大気の状態が不安定になると雷を生む積乱雲が次々と発生し、それに応じて落雷の地点が移動していくため、「サイトをチェックすれば、危険が迫ってきているかどうか知ることができる」と成田教授。「建物の中に逃げ込んだり、野外イベントを中止したりといった判断や行動に生かしてほしい」という。
観測網はドイツの研究者を中心に欧米などで先行して構築されており、その存在を2年前に知った成田教授が日本での展開を発案。昨年2月に藤沢市の同大に測定局を設置したのを皮切りに、北海道大(札幌市)や東北大(仙台市)などの協力を得て拡充を図ったほか、趣旨に賛同した市民宅や事業所にも取り付け、普及を進めている。
観測装置は汎用品の基板やアンテナ、GPS(衛星利用測位システム)などを組み立てたもので、費用は3万円ほど。これを屋上やベランダに設置し、インターネットに接続すれば測定局として機能する。
都内の自宅にも設置している成田教授は「リアルタイムのデータを無料で入手できるのがこのシステムの大きなメリット。測定局が多いほど位置特定の精度が高まるので、各都道府県に3カ所ずつは設置していきたい」と今後を見据える。
サイトのアドレスは、(https://www.lightningmaps.org/)。成田教授が使い方を解説したページ(http://www.5656jp.com/)もある。
安全の注意点 鉄筋建物や車内へ
落雷は夏に多い。今月19日には、多摩川河川敷の川崎市高津区で予定されていた花火大会が雷雨のため中止となり、公園のポールに落雷のあった世田谷区では男女9人がしびれなどを訴えて搬送された。落雷からどう身を守ればよいのか。