
川崎市が素案を示した「差別のない人権尊重のまちづくり条例(仮称)」に市内外から賛意が寄せられた。ヘイトスピーチを繰り返す者を罰する条例の意義を学ぼうと、4日に同市内で開かれた市民集会で、主催の「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」はメッセージを代読。「英断」などと評価する声を紹介した。
地元から歓迎の声を届けたのは元自民党参院議員で市日韓親善協会の斎藤文夫会長。在日コリアン市民を標的にするヘイト団体を「日本の恥」と断じてきた同会長は「罰則を盛り込んだ日本初の条例が実現する見通しとなった。福田市長の英断と議会や市民の良識の成果だ」とたたえた。
在日コリアンの辛淑玉(シン・スゴ)さんは移住先のドイツからメールをつづった。「発言権を奪われし者の最後の砦(とりで)は『地域社会の良心』。その扉が川崎でやっと開かれようとしている」。反ヘイトの声を上げた途端、インターネット上の差別書き込みによる攻撃にさらされ、国外へ逃れざるを得なかった辛さんは条例の成立へ「力を貸してください」と結んだ。龍谷大の金尚均(キム・サンギュン)教授も「行政の規制権限を示した条例が、日本における人権施策の新たな次元を開く」と期待を寄せた。
素案では市の勧告、命令に反してヘイトスピーチを行った者に50万円以下の罰金を科すほか、人種や性的指向、障害などを理由にした差別を包括的に禁じている。精神科医の香山リカさんは「みんなを自由に向けて解放する条例だ。どんな人ともいっしょに歩いていくと宣言しているのだから」と評価。「川崎市に住みたいと思う人もますます増える」と続けた。
集会では、素案の内容を神原元弁護士が「差別をこれほど幅広く禁止した条例は例がない。ヘイトスピーチをやらせる団体も罰則の対象にしており、先駆的で実効性も期待できる」と解説。市民ネットワークは8日から8月9日まで実施されるパブリックコメント(意見公募)への参加を呼び掛けた。