スコットランドを巡る日本人のツアーはまだ多くないと聞いた。それがためか、行く先々で旅行社の手抜かりが目立った。その最たるものがウエストハイランド鉄道の観光列車ジャコバイト号の乗車券であった。
そもそも予約の取りづらい人気列車。わがツアーも予定通りに指定券が確保できず、日程の入れ替えを余儀なくされた。おかげで旅程は行きつ戻りつの変則コースとなったが、ジャコバイト号に乗れるなら仕方がない。今回の旅はこれこそが目当てだった。
蒸気機関車が牽引する6両編成。ハリー・ポッターの映画に使われて有名になった。沿線最大の見どころはグレン・フィナン高架橋。荒野に美しい曲線を描きながら渡河する。世界最古というコンクリート橋脚のアーチが続く。
さて、乗るのはマレイグ18時38分発の折り返し便。蒸気機関車はバック運転だが、これも仕方がない。あとは指定席が進行方向右側であることを祈るばかりだ。ところが、私たちにあてがわれたチケットは各車両に飛び飛びのバラバラ。しかも右側の席はなかった。
だが、結果的にこれが幸いした。私は着席をあきらめて後部車両に移動し、通路デッキの窓を撮影ポジションとして確保。高架橋にさしかかるまでゆうに1時間以上、窓枠にしがみついて譲らなかった。終着フォート・ウイリアムでは煤だらけになっていた。身を乗り出し続けたからである。(F)