児童らを殺傷したとされる男は、社会から距離を置き、孤立を深める生活を送っていた。閉ざされた世界で生きる人たちに長年寄り添ってきた「不登校を考える親の会 川崎の会」の世話人、竹内春雄さん(70)=川崎市中原区=は、地元で起こった凄惨(せいさん)な事件に心を痛めている。「そこに至るまでに何らかのアプローチができなかったのか」。悩みの共有、そして家族関係の再構築。一人にならない仕組みづくりを訴える。
「引きこもりでああなったとあるが、なんであそこまで。それくらい過酷な人生を歩んできたということでしょうか」
竹内さんは、事件後に現場で自殺した岩崎隆一容疑者=当時(51)=の複雑な家庭環境に思いをはせる。同容疑者は両親の離婚などで、幼少時に伯父夫婦のもとに引き取られたが、長期にわたって就労せず、外部との接触を絶った生活を送っていたとされる。自ら死を選んだがゆえに、抱えた心の闇は明るみに出ることはなく、何を考えても想像の域は出ない。
「仮に親に見捨てられたと思うことがあったならば、これほどつらいことはない。なぜ生まれたのかと思うのは当然のなりゆき」。幼少期、自己肯定の機会を奪われた可能性に、事件へと連なる一端を見る。
「親が自分を認めてくれるという安心感が一番。大事にしているということが伝われば分かり合える」
これまで80組近い親子の悩みに触れてきた。わが子が自宅のベランダに立ち、遠くを見詰めていた。その姿を見て初めて、追い詰められた心に気付いた親がいた。「気が付いたら大丈夫。救う手だてはある」。寄り添い、心を砕き、本人の意思を尊重する。そうして親子関係を再構築してきた人たちを見てきた。