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職員との壁なくせ 横浜の障害者施設で入所者が自治会結成

社会 | 神奈川新聞 | 2017年8月21日(月) 02:00

相模原殺傷事件をテーマに議論する入所者と職員=横浜市栄区
相模原殺傷事件をテーマに議論する入所者と職員=横浜市栄区

 横浜市栄区の障害者支援施設「リエゾン笠間」で入所者が自治会を組織し、生活環境の改善や職員との意思疎通に取り組んでいる。相模原市緑区の障害者施設で元職員が入所者ら45人を殺傷した事件を受け、職員を交えたフリートークの場を新設するなど、入所者と職員の壁をなくす活動を広げる。相互理解を深め、手を携えて地域との交流も進めたい-。あの日から1年余、模索は続く。

 自治会発足は5年前、入所者の声を施設運営に反映させたいとの思いがきっかけだった。現在は重度の身体障害者や重複障害者ら入所者約30人で構成する。

 当初はクリスマス会や夏祭りなどイベント企画がメインだったが、昨年4月ごろからはより良い生活環境づくりに役立てようと、主にハード面での課題抽出と解決に向けて話し合いを重ねる。現在は最寄りの大船駅周辺のバリアフリーマップ作成に取り組む。議長を務める永井宏史さん(32)は「改善したいことを何でも話し合える場」と胸を張る。

 殺傷事件後の昨年8月からは毎月1回のペースで、職員同席のフリートーク「しゃべり場」を開く。環境改善につなげるのはもちろん、入所者から職員への気付きなどをざっくばらんに話すことで、元職員による凶行で生じた不安を払しょくし、互いの距離を縮めるのが狙いだ。

 「ノックをせずに部屋に入る職員がいる」「職員を呼んでも待たされる」。日々の何げない不満を施設運営に生かす。

距離


 先月30日は殺傷事件が大きな議題となった。

 「(元職員の)優生思想を聞いた時は悔しくてベッドで泣いた。同じ人間として見てほしい」。脳性まひと原因不明の下肢まひで歩行困難な60代の女性がやり場のない怒りを吐露した。胸椎損傷で両下肢まひとなった女性は「私たちは生きている。障害者だけど、その前に人間。しっかりと受け入れられる社会になってほしい」と訴えた。

 事件は入所者と職員の間に距離を生んだ。「介助を受けている時に『この職員もいろいろと考えているのかな』と思ってしまうようになった」。そう告白したのは、脳性まひで四肢がまひした小林陽子さん(56)だ。「会話や相談がなかったから事件が起きたのではないか。会話で信頼関係を築くべき」。そんな思いを強くしたからこそ、自治会にも参加する。

 勤務8年目で自治会担当の浅井徹さん(31)も関係強化の好機と捉え、「コミュニケーションを重ねることで、グループホームへの移行など入所者一人一人に合った生活を一緒に見つけたい」と期待を寄せる。

接点


 


自治会での入所者の要望で導入したユニバーサルデザインの自動販売機と永井さん=横浜市栄区
自治会での入所者の要望で導入したユニバーサルデザインの自動販売機と永井さん=横浜市栄区

どんな価値観や意識を持って仕事に臨むか、差別意識が自分の中に全くないと言い切れるか。勤務3年目の梶川朋さん(29)は事件後、入所者と触れ合う中で改めて自問した。

 「社会的有用性や経済性だけで人の存在意義をはかる考えに、明確に『ノー』を突き付けていかなければならない」。障害者福祉の現場に立つ自分たちに課せられた責務だと感じる。

 事件を機に、障害者施設と地域社会の関係が改めて注目される。入所者からは「ゆくゆくは自治会の代表が町内会に参加して連携を」との声も上がる。

 ゆっくりと、しかし着実に歩みを進める自治会は、入所者と職員だけにとどまらず、施設と地域とのより良い関係づくりの一助にもなるはずだ。浅井さんも「自治会メンバーを中心に講演などを通じて社会との接点を育んできた実績がある。さらに地域との結び付きを強めたい」と意気込んでいる。

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