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鎌倉、世界遺産へ「価値」議論 取り下げ4年、新コンセプト

社会 | 神奈川新聞 | 2017年8月20日(日) 02:00

 鎌倉など4県市が世界文化遺産登録を目指した「武家の古都・鎌倉」が国内推薦を取り下げてから4年。4県市は国内外の類似資産との比較研究を終え、新たなコンセプトづくりの議論を始める段階に入った。鎌倉の「普遍的な価値」をどう証明するか。再挑戦はまだ道半ばだ。

 「鎌倉の価値のベースがつかめた」

 元県職員で、世界遺産挑戦に15年以上携わる桝渕規彰・鎌倉市文化財部長は、比較研究の成果をそう評した。

 4県市は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の不登録勧告を検証し、国内外の文化財との比較研究不足を最大の要因と分析した。再挑戦にあたり、県と鎌倉、横浜、逗子の3市の担当者が分担して2014年度から3年間、中国や韓国、京都などへ計19回赴き、100カ所の文化財を調査してきた。

 比較テーマは▽禅宗寺院の伽藍(がらん)配置▽禅宗様建築▽やぐら▽大仏▽鶴岡八幡宮を中心とした神社-の五つ。文献調査も踏まえ、「建長寺の伽藍配置は中国南宋五山との交流から導入され、日本の大禅宗寺院は建長寺に倣った」「『大内裏』の位置にあり、都市の中心軸と祭祀(さいし)性を兼ね備えた参道を持つ鶴岡八幡宮のような神社はほかにない」といった結論を得た。桝渕部長は「やはり鎌倉の価値の“源泉”は、創建以来命脈を保ってきた中世の社寺にある」と断言する。

 次のステップは、「各要素をどう組み合わせて一つの『顕著な普遍的価値』に結びつけるか」。

 比較研究の内容や新コンセプトについて議論する「鎌倉」文化遺産比較研究委員会委員長の岡田保良・国士舘大教授(西アジア都市建築史)はこれが最大の難関、と指摘する。一見するとつながりがないように思える「禅宗」や「大仏」「鶴岡八幡宮を中心とした都市軸」などの要素をどう再構成するか。同委員会や海外の専門家が議論を重ね、これらを貫くストーリーを組み立て、世界的な普遍性を訴えるコンセプトを練り上げなければならない。

 4県市は不登録勧告の要因を「都市全体を構成資産として評価された」とも分析する。つまり、「タイトルのイメージは古都そのものだが、中身を見ると街部分が抜け落ちて周辺の山と寺ばかりではないか、と」(岡田教授)。ゆえに武家政権を示す物的証拠の不足を問題視された、とみる。

 資産を絞り込めばそれだけ、価値を明確に説明しやすくなるという見方もできる。ただ、「それでは登録されるのが鎌倉の一部でいいのか。禅宗も八幡宮も大仏も緑も捨てがたい」。岡田教授は、締約国が自国内の遺産を保護する義務を認識し最善を尽くすことが明記されている世界遺産条約を引き合いに、「市民、国民が世界遺産としての鎌倉に何を求めるのか。極端に言えば日本中が、鎌倉は自分たちの遺産と意識するところまで進めるのが世界遺産の理念だ」と強調する。

 国内暫定リストに記載され、世界文化遺産登録を目指すのは8件。1国の推薦枠は1件に限られ、再挑戦へのハードルは高い。「失敗は二度と許されない」(桝渕部長)中、模索が続く。

 ◆鎌倉の世界遺産再挑戦 2013年の世界遺産登録を目指していた「武家の古都・鎌倉」は、国際記念物遺跡会議(イコモス)から「不記載(不登録)」勧告を受け、同年6月に国内推薦を取り下げた。4県市(県と鎌倉、横浜、逗子の3市)は再推薦・登録に向け、不登録の要因を▽物的証拠の不足▽比較研究に基づく価値の説明不足▽世界的普遍性を訴える説明不足-と分析。国内外の文化財との比較研究を中心に、基礎的な調査研究に取り組んできた。

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