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韓国人彫刻家の思い 歴史と向き合う
時代の正体〈393〉消せない加害の歴史 慰安婦像制作

社会 | 神奈川新聞 | 2016年9月21日(水) 15:17

日本大使館前の少女像の原型を前にするキム・ソギョンさん、ウンソンさん(左から)=8月27日、都内
日本大使館前の少女像の原型を前にするキム・ソギョンさん、ウンソンさん(左から)=8月27日、都内

 日韓首脳会談で安倍晋三首相が移設を求めたことで再び注目を集めた、慰安婦を象徴する韓国・ソウルの日本大使館前の少女像。作者の韓国人彫刻家夫妻キム・ウンソンさん(52)、キム・ソギョンさん(51)は静かに語る。「加害責任に目を向けるのは難しい。それは日本だけではなく、韓国も同じ。でも、歴史を消すことはできない」。いま、韓国軍がベトナム戦争で起こした虐殺事件という加害の歴史をテーマに作品を制作している。

 毅然(きぜん)とした表情でいすに腰掛け、こぶしは両膝の上で固く握られている。慰安婦の少女をかたどった日本大使館前のブロンズ像。その周囲にはいま多くの大学生が座り込んでいる。昨年12月、日韓政府は慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることになった」と発表。合意のなかで少女像について「日本政府の懸念を認識し、適切な解決に努力する」とうたわれたことから、野宿を続けて撤去されないよう見張っているのだという。

 2011年、元慰安婦の女性による週1度の抗議活動が千回に達したことを記念して建てられた。日本政府は「在外公館の安寧と威厳を傷つける」という理由で移設を求めているが、ソギョンさんは首を振る。日本では「反日の象徴」と見なして反発する人たちがいるが、像の正式名称は「平和の碑」だ。

 「安倍政権は像に対して日本を害するもの、日本を攻撃するものだと考えていますが、そうではありません。歴史を記憶し、私たちの痛みを表現しているものなのです」

 像の隣にはいすが置かれ、寄り添うように座ることで被害女性がどのような思いをしたのかを考えてもらう狙いがある。「悲しい歴史を記録し、おばあさんたちを癒やし、平和を願うための像なのです。それのどこが日本の威信をおとしめるというのでしょう。過去について心から謝罪し反省することが、どうして日本の威信を下げることになるのでしょうか」

 夫妻は日本政府を批判する言葉を口にすることはない。「移設するべきだという考えがどこからくるのか、日本の皆さんに考えてほしい」と穏やかな口調で訴えるだけだ。

自国の虐殺事件



 ウンソンさん自身、自国が抱える負の歴史に向き合う難しさを感じている。「加害責任から目を背けようとするのは、韓国も同じです」

 夫妻は2年前、ベトナムを訪れた。ベトナム戦争で韓国は米国を支持し、軍隊を送り込んでいた。韓国軍は民間人を虐殺する事件を各地で起こし、ベトナムには韓国軍に対する「憎悪碑」が数多く残る。そのことを知った夫妻は虐殺の地を巡る旅に出たのだった。

 「事件を伝える石碑には犠牲者の名簿が刻まれています。名前も付いていない赤ちゃんもいたのでしょう。『0歳』とだけ刻まれているものもありました。大人だけではなく、多くの赤ん坊、子どもが犠牲になっていて、悲しみと申し訳ない思いでいっぱいだった。他国の戦争にお金をもらって兵士は派遣されました。元兵士たちは『われわれは愛国的行為をした』『お金を稼いでわが国を豊かにした』と言います。犯罪行為に手を染めた人たちのお金で私たちの生活が楽になったとしたら、申し訳ない」

 夫妻は今年、謝罪の意を表し、慰霊のための像を制作した。赤ちゃんを抱く母の姿をかたどったものだ。

 「謝罪と反省の思いを込めて、ベトナムの人に渡したい。ベトナムで建てる場所を探していますが、まだ見つかっていません。韓国にも作ろうと、民間団体が募金を集めています」

 韓国では、研究者や芸術家が韓国軍虐殺事件について発言を続けているが「韓国社会で事件に積極的に目を向ける人は一部にすぎない」。加害責任を追及してきた新聞社に2千人を超える元兵士が抗議活動を行い、一部の参加者が輪転機を打ち壊す事件も起きた。

広がる連帯の輪



 それでも加害の歴史を直視しようとする動きは広がっているという。ベトナム人被害者を支援するための基金創設の中心になったのは元慰安婦の女性たちだった。

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