箱根山(箱根町)で活発化した火山活動は、大涌谷で観測史上初の噴火に至った2015年と比べ低調に推移している。現時点では噴火の可能性は低いとみられているが、研究者は「過去の火山活動と特徴が異なる」と評価の難しさを指摘する。5段階の噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられてから26日で1週間。今後の活動は見通せず、長期化への懸念も出ている。
基準通り
2015年6月29日~7月1日の噴火によって大涌谷には火口や噴気孔が数多く形成され、噴気の勢いが強いままとなった。今年4月の段階でも高さ500メートルほどに達することがあり、気象庁は「引き続き活発」と評価していた。
こうした状況に加えて、同庁の観測で今月17日は一回もなかった火山性地震が18日は43回に急増。さらに、山体の膨張を示す地殻変動が3月中旬から衛星利用測位システム(GPS)で観測されるようになったことから、今月19日午前2時15分に警戒レベル2への引き上げに踏み切った。
地熱や噴気活動の高まり、カルデラ内での地震の多発、地殻変動-。警戒レベルの引き上げは、15年の経験を踏まえて気象庁が定めた判定基準に沿った対応だが、県温泉地学研究所の萬年一剛主任研究員は「当時と比べて地震の回数は少なく、地殻変動のペースも緩やかだ」と強調する。今月20日に現地調査した大涌谷の噴気に「特に変化はなかった」ことも含め、「いずれの現象も変化の度合いは小さい」と判断。箱根山の地下約10キロの深さにある「マグマだまり」よりも浅い場所に活発化の原因があるとみている。
マグマだまりの膨張が観測された15年の活動では、活発化と同時に大涌谷や周辺の噴気地帯の火山ガスに急激な組成変化が表れた。しかし、火山ガスの定点観測を続けてきた東海大の大場武教授は今月20日の緊急調査で、「二酸化硫黄(SO2)の臭いが強くなっていたが、15年のような大きな変化は起きていない」ことを確認。また、国土地理院によると、「衛星からの地殻変動観測でも、大涌谷で局所的な隆起は確認されなかった」という。
数年おき
萬年主任研究員は数々の観測データを踏まえ、「これまでのセオリーと違う」と現在の特徴を分析する。地震活動の中心が大涌谷から数キロ離れた芦ノ湖西岸周辺であることからも、「4年前の噴火で地下の状態が変わり、大涌谷では地震が起きにくくなったのかもしれない」と推測する。