他にはない神奈川のニュースを!神奈川新聞 カナロコ

  1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 不屈の闘い厚木基地爆音・5次提訴へ(中)法廷戦術 打てる手は全て打つ

不屈の闘い厚木基地爆音・5次提訴へ(中)法廷戦術 打てる手は全て打つ

社会 | 神奈川新聞 | 2017年8月3日(木) 16:02

第5次訴訟の提訴を前に開かれた原告団の結団式。悲願の飛行差し止めに向け、結束を強めた=7月22日、大和市内
第5次訴訟の提訴を前に開かれた原告団の結団式。悲願の飛行差し止めに向け、結束を強めた=7月22日、大和市内

 第4次爆音訴訟の最高裁判決が言い渡された昨年12月8日、原告団の報告集会は逆転敗訴という結果とは裏腹に、異様なほどの熱気に包まれていた。

 「判決はもっと闘えというサインだ」。悲願とする航空機の飛行差し止めに向け、冒頭、金子豊貴男・4次原告団長がマイクを握り呼び掛けた。「さまざまな課題があるが、一つずつクリアしながら、次の闘いへ前進していきたい」

 その後、「5次訴訟の提訴に向けて」と題する声明文が配られ、出席者からは賛同の拍手が湧き起こる。4次訴訟の終わったその日のうちに、5次訴訟を提起することが決まった瞬間だった。

 矢継ぎ早の法廷闘争もしかし、道のりは険しい。4次訴訟では、公権力行使の適否を問う行政訴訟を初めて取り入れた結果、一審、二審で自衛隊機の一部飛行差し止めを勝ち取ったが、最高裁で判断が覆された。最大の騒音発生源の米軍機に至っては、「国の支配が及ばない」として差し止めを容認する判決は一例もないのが実情だ。

 5次訴訟について、弁護団は「民事訴訟と行政訴訟を同時提訴した4次訴訟の形式を基本的に踏襲する」と説明。裏を返せば、新たに行政訴訟へと打って出た4次訴訟に比べ、目新しさや妙案に乏しい状況下での闘いとも言える。

 こうした現状を認めつつ、団長の福田護弁護士は「差し止めが一部でも認められた実績が4次訴訟でできた。そこからさらにどうステップアップさせるかだろう」と前を向く。

 キーポイントに挙げるのが、4次訴訟でも注力した深刻な爆音被害の立証だ。4次訴訟の一審、二審は「睡眠妨害は深刻で、健康被害に結びつく」と被害実態を正面から受け止め、自衛隊機差し止めを認める大きな要素となった。

 最高裁も被害の深刻さを認める一方で、自衛隊機運航の公共性とを秤(はかり)に掛け、後者に軍配を上げた。ならば被害の深刻さをさらに手厚く丁寧に立証する作業は不可欠というわけで、関守麻紀子弁護士は「欧州では騒音被害の研究も進んでいる。科学の中で常識とされることを裁判所に伝えていきたい」と意気込む。

 また米軍機については従来の飛行差し止め請求とは別に、騒音改善に向けた米国との協議を日本政府に義務付ける請求を新たに行う。「国には国民の権利を保障する義務がある、だからきちんと米国と交渉しなさいと主張していきたい」と福田弁護士。打てる手は全て打つとの姿勢で5次訴訟に臨む。

 早稲田大大学院の岡田正則教授(行政法)は「訴訟をやること自体が騒音被害解消の力になっていることは間違いない。諦めたら好き放題に基地を使わせることになり、声を上げ続けることがまずは重要」と訴訟の意義を語った。

 
 

厚木基地に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング