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SHELLYさん(上)「いじる」こと自体がナンセンス

社会 | 神奈川新聞 | 2019年4月26日(金) 19:55

 女性たちの本音を届けようと、インターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」で2年前に始まったニュース番組「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~」が話題になっている。番組が取り上げるのは、セクシュアルハラスメントやタブー視されがちな性教育、容姿による差別「ルッキズム」、在日コリアンの人権など、いずれも女性らが直面する困難な課題だ。各テーマに沿い、主に女性数人が実体験などに基づいて語り合うことで問題の背景などを探っている。

 女性たちのリアルな声を発信している番組。ともに横浜市出身で、司会のSHELLY(シェリー)さんと、プロデューサーの津田環さん(テレビマンユニオン)に、番組に込める思いなどを聞いた。


番組への思いなどを語るSHELLYさん=東京都内
番組への思いなどを語るSHELLYさん=東京都内

 -司会を引き受けるまでの経緯を教えてください。

 「タレントになった動機が、女性の生き方を改めて問えるような発信力を持ちたかったからなんです。特に、若い女性たちと専門家が性教育について語り合えるイベントを昔から開催したいと思っていました」

 「ただ、なかなかその夢が実現しない中で、この番組の話を頂きました。実は、子どもが生まれてからレギュラー番組の仕事を制限する方向でと考えていたんですが、マネージャーが『これ、SHELLYさんが興味のある仕事だと思います』と言って企画書を持ってきてくれたんです」

 「女性が生きづらいと感じていたことに正面から切り込んでいく内容で、私がやりたかったことがそのまま企画になっていました。『これはぜひやりたい』と、司会を引き受けました」

 -地上波のバラエティー番組でも司会などで活躍されています。ジェンダー平等を欠いた発言もあるかと思いますが、違和感を感じたことは。

 「いっぱいあります。番組を作っている側も、出ている側も圧倒的に男性が多いんです。『タレント番組出演本数ランキング』というのがありますが、ほとんどが男性です。例えば女性に限らず、障害者やLGBT(性的少数者)の人もどんどんテレビに出る機会を増やすことをしないと、みんなが楽しいと思える番組を作ることができないと思うんです」

 「それは会社の中でも、公共交通機関の中でも同じ。誰もが過ごしやすい空間をつくる努力が必要ですが、男性優位の社会はテレビの世界にも縮図として反映されています。でも、少しずつですが変わってきたと思うこともあります」

 -例えばどのようなことでしょうか。

 「例えば芸人さんがちょっとなよっとした男性を『おまえ何か怪しいぞ。これ疑惑だな』とツッコミを入れるのが笑いになっていたのが、だんだん笑いにならなくなってきたと思う。だって当然のことだと思います」

 「『疑惑』って悪い事をした人に対して使う言葉。もしもその人がゲイであっても、それは別にゲイだと、何の疑惑でもないんです。それを『いじる』こと自体がナンセンス。テレビの中でも時間はかかったけれど、その価値観は段々浸透してきていると思います」

 「少しずつ変わっていると感じていますし、自分もそういういじりには乗らないようにしています」

 「例えば、ちょっとぽっちゃりしている女性が食事をしている写真を見てみんなで笑う流れがあると『何がおもしろいの』と思ってしまう。ただ、『それはおかしいです』と言ったところで私の発言はカットされるだけなんです。編集されて残らず、結局世の中は何も変わらないし、SHELLYって面倒くさいよねとなるだけ。じゃあどうやって世の中を変えていくのか。私はまず、そういういじりがあっても笑わないようにしています」

 「あとは、私がいつもスタジオで実行しているのはみんなが笑った後、一拍置いてから『食べていてもいいんですけどね』と言うようにしています。例えばさっきの男性に対しても『おい怪しいぞ』『こっちちゃう』と笑いになったときは、編集される前提で一拍置いて『もちろん、ゲイだったとしてもいいんですけどね』と絶対に言うようにしています」

 -その発言に対して、周りの反応は。

 「それを言われた人は『ああそうなんだ。そういうふうに言われちゃうんだ今』と、息苦しさと肩身の狭さを感じる。次にもしその人がいじる時に、『こないだSHELLY、うるさかったな。また言われたらめんどくさいな』と思ってやめるかもしれない。私はその小さな『チクッ』のため、すごく小さな変化でもバラエティーの現場では言い続けています」

 「それをやり続けていたらある時、スタジオの観覧者の方が3人くらい拍手をしてくれました。もちろんその場面はカットされましたが、今の若い人たちはこういう感覚なんだとすごくうれしくなりました」

 「世の中、少しずつでも変わってきている。今まで日本は『臭い物にはふた』で違和感を隠してきたけれど、それに声を上げられる世代が確実に育ってきた。それはすごく感じています」

 -米国では米映画界のセクシュアルハラスメントの問題から「#MeToo」(「私も」の意)運動が起こりました。日本の芸能界ではあまりその動きはありません。意見を発信する怖さはありますか。

 「最初はすごくありました。自分も仕事をして食べていかないといけないし、世の中を変えると思ってもタレントとして使ってもらえなかったらもともこもないじゃないですか。でもそこは自分なりにバランスを取っていて、だからさっきみたいに編集できるように一拍置くとか、自分にできる試みから取り組んでいます」

 「米国はヒーローをすごくたたえる社会です。たとえ1人でも『これはおかしい』と訴えれば『良く言った 1人でえらい』となりますが、日本は一人で進むと『ちょっと待って』となります。悪く言えば『出るくいは打たれる』。小さいアクションでも、手探りで実行していく方が今の日本社会や芸能界には合っていると思う部分もあります」

 -SHELLYさんに共感する芸能人の方は周りにはいますか。

 「うーん。裏方にはいます。芸能界でそういう話はしづらいかな。でも、さっしー(指原莉乃さん)や、りゅうちぇるは、自分の中の軸がすごくしっかりしていて、2人の発言を見ていても勇気があって偉いなと感じています」

(聞き手・蓮見 朱加)


 SHELLY(シェリー) 1984年、横浜市中区出身。米軍根岸住宅(横浜市中・南・磯子区)で育つ。モデルや司会として活躍。

 
 

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