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少数民族ヤズディの“日常”写す ISに迫害される女性たち フォトジャーナリスト林典子さん

社会 | 神奈川新聞 | 2017年7月25日(火) 12:00

銃を持つ女性兵士のデルシムさん
銃を持つ女性兵士のデルシムさん

 戦争、差別、貧困-。不条理な世界で虐げられた人々に寄り添い、カメラのシャッターを切り続ける女性がいる。川崎市出身のフォトジャーナリスト・林典子さん(33)。最新刊の写真集「ヤズディの祈り」(赤々舎)では、過激派組織「イスラム国」(IS)に迫害されている中東の少数民族・ヤズディの姿を記録した。「彼らにも私たちと同じ日常があったことを知ってほしい」。写真集に込めた思いを聞いた。

 一人になったとき、ふと見せる無防備な表情。林さんのファインダーに写る人々は、まるで誰かに撮られていることを忘れているようだ。

 キルギスの誘拐結婚、パキスタンで求婚を断った男性から硫酸をかけられ顔を焼かれた女性たち-。日本にいては知り得ない現実を伝えるため、林さんは現地に足を運ぶ。

 大学で国際政治学を学び、将来はNGOや国際機関で働きたいと考えていた。米国留学中に大学で募集していた西アフリカ・ガンビアでの研修視察に参加し、ガンビアの社会を見つめようと初めて本格的なカメラを手にした。

 研修後も一人現地に残り、地元の新聞社で報道の仕事に就いた。「今まで世界中のジャーナリストと仕事をしてきたけれど、ガンビアの記者ほど影響を受けた人々はいません」


子どもに母乳を与え、遠くを見つめるズィーナさん。夫はISの戦闘員に殺害された
子どもに母乳を与え、遠くを見つめるズィーナさん。夫はISの戦闘員に殺害された

 同国は深刻な貧困問題を抱える。記者らは食べる物がない日は、集中力が続かず取材を切り上げる日もあった。権力を批判することで命を狙われる記者もいた。「貧困や政情不安で、記事を書きたくても書けない人たちがいる。自由な自分には、何が書けるのか」。彼らと同じ場所で働けたことが「フォトジャーナリストとしての自分の原点です」と振り返る。

■ ■
 中東や難民としてドイツなどに暮らすヤズディを知ったのは、2014年8月。ISがイラクのシンガル山付近に暮らすヤズディを数日間で約5千人殺害したという悲惨なニュースが流れた。

 ヤズディは世界に約60万~100万人いるといわれ、その内、約50万人がイラクに暮らす。ISによって人身売買や性的暴力に遭った女性は約6千人。「この時代になぜ…。自分の目で見る必要があると思いました」

 15年2月にイラクへ。ジャーナリストの後藤健二さんがシリアでISの戦闘員に殺害されたばかりだった。あらゆる情報を集め慎重に取材の準備を進めた。ヤズディの通訳が家族と暮らす家に滞在し、約1カ月間の取材を試みた。


故郷を守るため女性兵士になったデルシムさん(左から2人目)。ISが侵攻する前は、オシャレをして普通の暮らしを送っていた
故郷を守るため女性兵士になったデルシムさん(左から2人目)。ISが侵攻する前は、オシャレをして普通の暮らしを送っていた

 現地で出会ったのは、ISに拉致され人身売買の被害に遭った女性たちだ。彼女たちと寝食を共にしながら、時が来たら撮る。どんな表情でどんな構図か、型にはめる伝え方はしたくない。「その瞬間が来るのを待つしかないんです」。彼女たちの信頼を得ることで、ありのままの姿を記録してきた。

■ ■
 女性の中には、まだ親族がISに捕らわれたままの人もいる。報復を防ぐため、ヤズディの女性が頭を覆うための白いスカーフをファインダーの前に垂らし、撮影せざるを得ないケースもあった。

 


白いスカーフ越しに撮影したヤズディの女性が写った表紙
白いスカーフ越しに撮影したヤズディの女性が写った表紙

「首から下を撮る方法もあるけれど、本当は全部写したい。何も悪いことをしていないのに、全部を隠されたものにはしたくない」。スカーフ越しに透ける女性の横顔を写真集の表紙にも選んだ。「うっすらと写る女性たちの横顔。見る人が目を凝らして写真を見つめることで、苦しむヤズディの女性たちがほかにもたくさんいることを想像してほしい。そのこともしっかりと伝えたかった」

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