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訪問看護、ハラスメント被害深刻 「経験ある」7割

社会 | 神奈川新聞 | 2019年4月4日(木) 19:19

 在宅医療・介護の進展で、訪問看護師やヘルパーが、利用者・家族から暴力・ハラスメント被害を受ける事例が相次いでいる。神奈川県民主医療機関連合会(神奈川民医連)が発表した「訪問看護師が受ける利用者・家族からの暴力・ハラスメント実態調査」によると、「なんらかの暴力・ハラスメントを経験したことがある」と回答した訪問看護師は約76%に上り、深刻な実態が明らかになった。神奈川民医連では「暴力・ハラスメントは許されないという意識改革が必要」とし、防止策に取り組むとしている。

 神奈川民医連は、県内の病院、診療所、介護事業所など95事業所で組織。今回の調査は、加盟の全12訪問看護事業所の訪問看護師77人を対象とし、昨年11~12月に調査票を配布し68人(回収率約88%、男性1人、女性67人)から回答を得た。

 調査結果によると、被害経験は、利用者からの身体的暴力が約29%にもなった。利用者からの精神的暴力は約53%、利用者からのセクハラは約56%、家族からの身体的暴力は約4%、家族からの精神的暴力は約19%、家族からのセクハラは約10%だった。何らかの暴力・ハラスメントの経験があるとしたのは約76%にも上った。

 そして、暴力・ハラスメントによって、約19%が「身の危険を感じた」、約22%が「仕事を辞めたいと思った」としており、利用者宅という密室で1対1の関係になりやすい中、少なくない訪問看護師が、恐怖と強いストレスに見舞われていることを示した。

 一方で、「暴力・ハラスメントを受けた際、上司に報告した」のは約63%に止まった。また、発生時の対応(52人、複数回答)では、「対象者に話しかけながら関わりを継続」(38人)が最も多く、「止めてくださいとその場で明確に意思を伝えた」(17人)を大きく上回った。他は、「理由をつけてその場を離れた」(7人)、「何も対応しなかった」(4人)などだった。

 また、組織に希望する対応(52人、複数回答)は、「今後の対応を明確に示してほしかった」(19人)、「具体的対応について話し合う場が欲しかった」(12人)、「事実を認めてほしかった」(8人)、「契約を打ち切ってほしかった」(6人)などが上がった。実態把握やリスクマネジメントの不足、対応マニュアル整備の遅れなどが浮き彫りになった。

 こうした状況の背景には、加害者が認知症などのケースもあり、訪問看護事業所の側にも「利用者をケアの対象者と認識しているために、訪問看護師の疾病の理解不足、対応力量の不足としてとらえ、訪問看護師の対応だけに原因を求める傾向がある」という。

 片倉博美事務局次長は「看護師の使命感から病気だから仕方ないと我慢してきた。組織的対応も弱かった。しかし、これからは意識改革が必要。加害者も被害者も生まない防止策を取るべきだ。看護師2人で訪問した場合に報酬上で評価することも検討すべきだ」とした。

 調査にあたった「訪問看護ステーションいずみ」(横浜市泉区)の長澤幹所長も「スタッフを守れる職場を作りたい。契約書に暴力・ハラスメントへの対応を位置付け明確化する、防止マニュアルの作成、研修の徹底などに取り組んでいきたい」と話した。


暴力・ハラスメント実態調査について説明する神奈川民医連の訪問看護師ら
暴力・ハラスメント実態調査について説明する神奈川民医連の訪問看護師ら
 
 

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