横浜市神奈川区のマンションの自室に男性の遺体を遺棄したとして、いずれも自称で無職の女(60)=同区松本町3丁目=ら3人が死体遺棄容疑で逮捕された事件で、神奈川署は16日、この男性が、連絡が取れなくなっている女の60代の夫とみて身元の確認を急いでいると明らかにした。同署は、3人から男性の死亡の経緯についても事情を聴く方針。
同署によると、ほかに逮捕されたのは、いずれも自称で無職の長女(34)、次女(29)の両容疑者。女と次女は「分かりません」と否認、長女は「話したくない」と供述している。
同署によると、マンションの管理会社から「異臭がする」と相談を受け、14日に署員が訪問。女らが入室を拒み「夫は1カ月ぐらい前に家を出てどこにいるか分からない」と説明したため、15日に家宅捜索し、洋室の布団脇で横たわる男性の遺体を発見した。死後1カ月程度とみられ、頭の一部が白骨化していた。
家族を巡るトラブルは、県警も把握していた。昨年10月に女から「夫が金をしまい込んだ」と110番通報があり、駆け付けた署員に夫が「娘に羽交い締めにされ妻に殴られた」と説明。けがはなく、被害届は出なかった。約1カ月後に署員が再度訪問したところ、夫が「暴力は振るわれていない。お金も渡しているので大丈夫」と話したため、同署は「トラブルは解決した」と判断したという。
現場は、東急東横線反町駅から北西約400メートルの国道1号に近い住宅街。
夫、区役所に何度も相談
連絡が取れなくなっている女の夫が昨年9月からことし3月にかけて、居住する横浜市神奈川区役所の窓口に繰り返し相談に訪れていたことが16日、分かった。同区高齢・障害支援課の担当者は「可能な限り適切な対応をした」と話している。
同課によると、夫は昨年9月20日、公衆電話から「年金で暮らしているが、家族から金をせびられている」「妻と2人の娘から暴力を受けている」「多額の金を取られた」などと同課に初めて相談してきた。
以降、窓口への来所や電話など月数回ペースで相談を重ね、「退職金を半分持っていかれた」などと話した。対応した職員は「家族と離れることも考えて」「場合によっては警察に相談を」とアドバイス。職員による家庭訪問を提案したが断られたという。
ことし3月6日に窓口を訪れたのが最後で、家族から暴力を受け金を渡していることなどを相談。同課は「担当者は緊急性は感じなかった」としている。