この3月、北海道の石炭に縁が深い鉄道や施設がいくつか消える。駆け足だが訪ねてみた。まずは根室本線の尺別(しゃくべつ)駅。帯広と釧路の間の小さな無人駅。JR北海道の2016年の資料によると利用者は1日1人以下。隣の直別(ちょくべつ)駅、花咲線の初田牛(はったうし)駅とともに、この15日に廃止された。
開業は1920(大正9)年。近くにあった尺別炭鉱の石炭を運び出す貨物駅としてのスタート。その後、旅客も扱い1959(昭和34)年度には年間10万人以上が利用した。
だが、エネルギー革命で石炭の利用は減り、1970(昭和45)年には、尺別炭鉱は閉山。翌年には貨物扱いをとりやめ、無人駅となっていた。訪ねたのは廃止の1週間ほど前。釧路発の1両編成の普通列車で1時間余の旅だった。
相対式ホームに跨線橋。海側に木造の小さな駅舎。周辺にいくつかの建物はあるが、住民らしい姿は全く見えない。鉄道ファンとおぼしきカメラを持った数人が、思い思いに記念撮影するくらい。20分後、逆方向の釧路行きで戻った。
実は私は尺別炭鉱を経営していた雄別炭鉱の町の出身。父から「尺別」の名前は聞いていたが、駅へ降りたのは今回が初めて。駅があるうちに来られたのは幸いだった。閉山からほぼ半世紀、ご苦労様でした。(a)