安倍晋三首相の自衛官募集を巡る発言が波紋を呼んでいる。県内自治体からは疑問や反発の声が上がる一方、自衛隊の要請を断りにくい事情を口にする担当者もいる。当人の知らぬところで個人情報がやりとりされることに不安を感じる市民は少なくなく、動揺が広がっている。
「あくまでも法令に基づく対応をしている」
自衛官募集を巡り、住所や氏名などを記載した名簿提出を要請する自衛隊に対し、住民基本台帳の閲覧にとどめている自治体担当者は口をそろえる。
湘南地域の市担当者は「住民基本台帳法に『資料の提供』という決まりはなく、名簿提出は台帳法の規定を超えている」。別の市幹部も「台帳法は原則、非公開。自治体としては個人情報を守らなければいけない」と強調する。
神奈川新聞社の調べに対して「該当者を抽出せず、台帳の閲覧に制限している」と答えた県内自治体は、全体の約5割の9市6町1村。「自衛隊でも自治体でも民間でも、台帳法が認める範囲で対応している」(西湘地域の町幹部)、「他の閲覧者との公平性を保つため」(県央地域の市幹部)など、多くが「自衛隊だけ特別扱いすることはできない」との立場だ。
度重なる自衛隊の要請に対応を変えた自治体もある。南足柄市は2017年度、「抽出せず、台帳の閲覧」としていた対応を改め、対象者の個人情報が記載されたデータを提供することとした。