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自衛官募集、県内3市2町が名簿提出 法的根拠は不明瞭

社会 | 神奈川新聞 | 2019年3月13日(水) 05:00

自衛官募集を巡る県内自治体の対応
自衛官募集を巡る県内自治体の対応

 自衛官の募集事務を巡り、安倍晋三首相が「6割以上の自治体が協力を拒否している」と発言したことを受け、神奈川新聞社が調査したところ、県内の全33市町村が募集に協力し、このうち川崎市や横須賀市など3市2町は対象者の名簿を提出していることが12日までに、分かった。残る28市町村は個人情報保護の観点から公開を制限する住民基本台帳法や条例などを踏まえ、名簿や住基台帳の閲覧で対応。自治体間で大きく違いが生じており、名簿提出を裏付ける法的根拠のあいまいさが浮き彫りとなった。

 自衛官募集は、全国50カ所に設置されている自衛隊地方協力本部が業務を担う。自治体から提出された名簿や住民基本台帳の閲覧で得た個人情報を基に、入隊に適した18歳、22歳などの男女にダイレクトメールを送るほか、戸別訪問などを実施する。

 こうした自衛官募集への自治体の協力は自衛隊法に基づいており、全国の市区町村に対し、対象となる住民の住所や氏名などを記載した名簿やデータの提出を要請している。同法は法定受託事務として自治体が「事務の一部を行う」と規定し、同法施行令で防衛相が名簿の「提出を求めることができる」とする。ただ、提出は義務ではない。

 一方、住民基本台帳法は、国または地方公共団体は法令で定める事務の遂行のために必要である場合に限り、住民基本台帳の一部の写しを閲覧させることができるとしている。

 神奈川新聞社の取材に対し、防衛省からの要請への対応について、川崎、横須賀、南足柄の3市と葉山、開成の2町(15%)が「名簿提出」と回答。7市5町(36%)が「該当者を抽出した名簿の閲覧を認める」、9市6町1村(48%)が「該当者を抽出せず台帳の閲覧を認める」と答えた。

 判断の根拠については、名簿提出の自治体は「防衛相から市長に要望があり、市の個人情報保護条例などを精査して提出できると判断した」(川崎市)、「個人情報保護条例には個人情報の利用や提供に制限があるが、ただし書きで『法令の定めがあるとき』は除外されている」(横須賀市、葉山町)などとした。

 一方、閲覧にとどめる自治体は「住民基本台帳法には提供の文言がない」(平塚市)、「自衛隊法は名簿提出を明確に定めていない」(座間市)、「市の個人情報保護条例に抵触するため要請には応えられない」(藤沢市)など法令に基づく対応としている。

 なお、名簿の提出や閲覧以外の「協力」として、各自治体は広報紙での募集記事掲載や、啓発物品の配架などを行っているとした。

首相の自衛官募集発言 安倍晋三首相は2月10日の自民党大会で「(市区町村の)6割以上が協力を拒否している」と発言。さらに、同13日の衆院予算委員会で「防衛相の要請に対し、6割以上の自治体から自衛官募集に必要な協力を得られない」と述べた。自民党は14日付で、所属国会議員に地元自治体に関連名簿提出を促すよう求める通達を出した。ただ、共同通信の調べによると、住民基本台帳の閲覧を含めると全国の市区町村の約9割が協力しており、反発や疑問の声が相次ぐ。名簿提出は法令上の義務ではなく、野党は「地方への圧力」と批判している。

 
 

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