
「この場で契約のご報告をする予定でしたが…。お集まりいただき、申し訳ないのですが、ご報告できない状況となりました」
6月22日夜。横浜市神奈川区の神大寺学童クラブで臨時運営委員会が開かれた。運営委員長の森博さんをはじめ約20人の出席者を前に、移転委員の中村政信さんが物件交渉が難航している現状を報告した。質問や不安の声が相次ぎ、この日は、契約がまとまりそうになった場合、移転委員を中心に交渉を進めるという点を確認するにとどまった。
解散は午後9時すぎ。小さい子どもを抱える母親が夜の時間に家を空けるのは難しい。会議に出席する立場ではないからと、子どもを預かってくれる保護者もいるという。「ありがたいです」。母親たちはそう言って足早に引き揚げていった。
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移転問題に直面しているのは、神大寺に限った話ではない。
市放課後児童育成課によると、2015年4月1日の条例施行段階で面積や耐震の基準を満たしていない放課後児童クラブ(学童保育)は、市内222カ所のうち134カ所。全体の6割を占めた。
一方、今年4月1日現在は同225カ所中、101カ所。2年間で基準を満たしたのは33カ所だった。このうち、移転したのは10カ所。新たに部屋を確保する「分室」が6カ所、もう一つの学童を立ち上げる「分割」が4カ所だった。
市が定める経過措置期間が終了するのは19年度末。市は、面積基準を満たすことを理由に移転する場合、上限200万円(対象経費の全額)の準備補助金を交付。移転後は月額20万円を上限に、施設賃借料を補助するとしているが、経過措置期間内に移転できなかった放課後児童クラブは、補助金の対象外となる。
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神大寺のように、学童の多くが運営委員会方式を採用して保護者らが運営を担っている。市は、物件探しをサポートする事業を展開するものの、個別の交渉には関与しない立場。資金面の負担もさることながら、精神的、肉体的な負担が重くのしかかる。
中村さんは打ち明ける。「まず、広い物件がなかなか見つからない。周辺への騒音を理由に大家から断られたこともある」。休日の臨時保護者会、有給休暇を使っての役所回り、深夜遅くまでの資料作成…。終わりの見えない日々が続く。