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沖縄考 ウルトラマンシリーズ脚本家
時代の正体〈489〉上原正三さん語る〈上〉 故郷の現実色濃く投影

社会 | 神奈川新聞 | 2017年6月30日(金) 12:26

ウルトラマンシリーズの作品に込めた思いを語る脚本家・上原さん
ウルトラマンシリーズの作品に込めた思いを語る脚本家・上原さん

 凜(りん)とした佇(たたず)まい。待ち合わせた県内の駅改札に現れた姿を見て、その人だとすぐに分かった。沖縄出身の脚本家・上原正三さん(80)。放送開始から今年で半世紀となる「ウルトラセブン」や後継シリーズの「帰ってきたウルトラマン」を手掛けた特撮界の巨人だ。「琉球人としてヤマト(本土)で生きる」。そう標榜(ひょうぼう)して60年余。作品は故郷・沖縄の現実を色濃く投影し、マイノリティーへの差別を描き、時には人間の心の闇もあぶり出した。今年、沖縄は本土復帰45年。行きつけの喫茶店でゆったりと腰掛けると温和な表情が一転、眼光鋭く語り始めた。作品に込めた思い、沖縄の苦悩、そしてこの国の姿を-。

 見る者を沈痛な思いにさせる。特撮ヒーロー番組らしからぬ異色の作品がある。「帰ってきたウルトラマン」第33話「怪獣使いと少年」(1971年)。上原さんが脚本を執筆した。

 舞台は川崎の工場地帯。ストーリーはこうだ。

 孤児の少年が河川敷の廃屋で老人と暮らしている。老人の正体は、地球の環境調査にやってきたメイツ星人。地球の大気汚染が原因で衰弱し、地中に埋めた宇宙船を掘り起こせなくなっていた。少年は来る日も来る日もスコップで河原を掘り、老人に代わって宇宙船を探し続けていた。

 やがて少年は「宇宙人」と周囲から疑われて迫害され、ついには暴徒と化した地域住民らに襲われる。エスカレートする群集を前に、老人は少年を守ろうと自分こそが宇宙人だと名乗り、警察官に射殺される。その結果、老人に封印されていた巨大怪獣がよみがえり、暴れ始めた-。

 モチーフは関東大震災直後のデマで多くの朝鮮人が虐殺された事件だ。そこに日本の陰の側面を幾重にも重ねた。

 北海道・江差出身の少年はアイヌ民族を連想させる。老人は在日コリアンに多い「金山」と名乗らせた。舞台の川崎や隣接する横浜・鶴見には沖縄出身者が集住する。いずれもいわれなき差別や偏見に苦しめられてきた人々だ。列島が高度経済成長を謳歌(おうか)する中、その陰で人々をむしばんだ公害問題も織り込んだ。

 一つのうわさが新たなうわさを呼び、次第に歯止めがきかなくなる。描いたのは、集団心理の怖さだ。

 「関東大震災の時、『朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ』とうわさが広がり、うのみにした人々が多くの朝鮮人を虐殺した。日本語の発音がおかしいからと犠牲になった地方出身者もいたという。琉球人の私もその場にいれば殺されていたかもしれない」。戦時中は、敗戦濃厚の中で「一億玉砕」へと突き進んだ。

 そして今、ヘイトスピーチとも重なる。

 「デモ参加者の多くは普通の人たち。例えば、パートと子育てに忙しい主婦がインターネット上に罵詈(ばり)雑言を書き込み、街に繰り出して『朝鮮人死ね』『中国人を東京湾に沈めろ』と連呼する。しかし、帰宅して玄関を入ると、ごく普通の主婦に戻る。虫の居所一つで誰もが変わり得る。そこが恐ろしい」

 「怪獣使いと少年」では、怪獣が暴れ始めた途端、住民らが地球防衛チーム「怪獣攻撃隊(MAT)」に「退治しろ」と訴える。主人公の郷秀樹はしかし、戦おうとはせず、むしろ迫害される側の無念を思い、心の内で叫ぶ。

 〈勝手なことを言うな。怪獣をおびき出したのは、あんたたちだ。まるで金山さんの怒りが(怪獣に)乗り移ったようだ〉

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