
横浜銀行の設立以来初となる生え抜き頭取に川村健一氏が就任して、29日で1年。同行と東日本銀行が経営統合し、持ち株会社コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)が発足したことで誕生した「プロパーらしい頭取像」(川村氏)や、地域金融機関としての生き残り策とは。動向を振り返る。
「従来あり得ない」
横浜銀前頭取でコンコルディアFGの寺澤辰麿社長からバトンを受け継いだ川村氏が「顧客本位でサービスを提供する」ためにまず取り組んだのは、取引先企業への訪問。自ら資金需要や経営課題の把握に努めた。訪れた先は年間300社の目標に届かずも250社に上ったという。
中小規模以下の企業にとって、取引行の頭取の直接訪問は一大イベント。相模川以西の金融関係者は、ある会合に川村氏が訪れ、ちょっとした話題になったと打ち明ける。「横浜銀の頭取が顔を出すことは従来あり得なかった」
従来の頭取が知事と政令市長の範囲にとどめていた県内自治体の首長訪問にも、川村氏は力を入れた。地域の主要イベントまで訪問対象に加え、今年の節分は鎌倉市内2カ所で豆まきに参加。関東地方の他の地銀を引き合いに「頭取が豆まきに参加するのは当たり前。2月3日が空いていたのは横浜銀だけ」。
存在感向上の好機
「OBは皆、川村君推し」。頭取就任から1カ月後。財務省(旧大蔵省)出身の頭取が続いた横浜銀での初の生え抜き頭取誕生は“大願成就”だったと、OBの声は弾んだ。川村氏を売り込むことは、地域金融機関として存在感を高める好機でもあった。