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「裏山へ」児童救う決断 陸前高田の元校長が講演 横須賀

社会 | 神奈川新聞 | 2019年2月1日(金) 17:00

校長として児童の命を守った経験を振り返る菅野さん=横須賀市総合福祉会館
校長として児童の命を守った経験を振り返る菅野さん=横須賀市総合福祉会館

忘れまい 避難の教訓


 東日本大震災の巨大津波にのまれた岩手県陸前高田市立気仙小学校で、当時の校長だった菅野祥一郎さん(68)が1日、横須賀市で講演した。裏山への避難によって児童92人の命を守った8年前の経験を振り返り、「災害は人ごとではない。自分の命を守るために想像力を働かせ、教訓を忘れないでほしい」と訴えた。

 海から約1キロ、川まで300メートルほどの気仙小は校舎3階まで浸水。しかし、地震の約30分後に出先から学校へ戻った菅野さんの指示で裏山へ急いで登り、それまでは校庭で待機していた児童や教師らは間一髪で助かった。

 「避難場所だった学校には、住民も地域ごとに集まっていた。大勢が一緒にいたので安心感があったのではないか」と菅野さん。斜面に丸太の階段が付いた裏山への避難はマニュアルや訓練に基づいた行動ではなかったが、「私には何度か登った経験があった。だから子どもたちも容易に登れると思った。迷いはなかった」と、とっさの判断だったことを明かした。

 「教師は命懸けで子どもを守らなければならない」と重ねて強調。「子どもがいたから、とにかく逃げよう、逃がそうとスイッチが入った。子どもにつられるように地域の人も走った」と避難行動の大切さをかみしめる一方、屋根の上で救助を求めながら流されていく人に対しては「なすすべはなかった」。助かった気仙小の児童全員に帰るべき家がないという苛烈な現実も突き付けられた。

 こうした経験を踏まえ、菅野さんは「津波災害の三つの特徴」を挙げた。「たくさんの人が一度に亡くなる。遺体が見つからない。そして忘れられるということだ」と指摘。「津波は台風のように毎年襲ってくるものではないため、時間とともに記憶が薄れていく。災害は忘れないうちにやってくるが、津波は忘れたころにやってくる」とし、備えの意識を持ち続けるよう説いた。

 歳月を経て風化が進む被災地の現状を嘆きつつ、こう呼び掛けた。「日常を取り戻す人も、復興の長い道のりを覚悟して頑張っている人もいる。立ち上がろうとする人々の姿も忘れないで」

 講演会は横須賀市が主催し、約200人が参加した。

 
 

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